なでしこJが王国を「絶望に落とした」 海外賛辞、ブラジルに悪夢の一撃「スペクタクル」【コラム】

歓喜の瞬間を迎えたなでしこジャパン【写真:早草紀子】
歓喜の瞬間を迎えたなでしこジャパン【写真:早草紀子】

グループリーグ第2戦でブラジルを2-1撃破、英記者が見たなでしこJの出来

 パリ五輪の女子サッカー競技は現地時間7月28日にグループリーグ第2戦が行われ、C組のなでしこジャパン(日本女子代表)はブラジル代表に1-2で逆転勝ちした。後半アディショナルタイムにDF熊谷紗季がPKを決めて追い付くと、MF谷川萌々子がロングシュートを叩き込んで劇的な勝利を収めた。かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を7大会連続で現地取材中の英国人記者マイケル・チャーチ氏は谷川の決勝弾を「スペクタクルなもの」と絶賛した。

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 アディショナルタイムの終盤、MF谷川萌々子はボールがブラジル人GKロレーナの頭上を越えていった時、自身の目を疑っていたが、この19歳のとてつもない努力が日本のオリンピックの希望をつないだ。

 池田太監督のチームの出足は間違いなく遅かった。アディショナルタイムの2つのゴールが、第1戦で喫した世界王者スペインとの僅差の敗戦の後に早々と終るかと思われた大会に、とどまれるように救った。

 負傷者が増えていることによって、池田監督のチームには厚みが欠けている。それでも、DF熊谷紗希と仲間たちは、決勝トーナメント進出を狙うブラジルに負けることを拒否し、強い精神力と決意を示した。

 この試合のパフォーマンスに欠点がなかったわけではない。日本の劇的な勝利には、運の要素が多分に貢献している。

 スロースターターだったにも関わらず、なでしこは主導権を得たものの、前線が作り出したほとんどのチャンスを台無しにした。ゴール前でのFW田中美南は自信を失っているようだった。

 彼女の序盤のシュートが枠外に飛んだことは不運だったが、アディショナルタイムに弱々しく放たれたPKは、自分は成功できると信じられていなかった選手によるシュートだった。それは試合終盤に日本が同点に追い付く極めて重要なチャンスのPKで熊谷がキッカーを務めることを示唆していた。

 2つのチームは互角の試合展開を見せていたが、後半11分にマルタが絶妙にコントロールされたパスをDF高橋はなの背後に送って日本の最終ラインを崩し、最終的にジェニフェルがゴール隅に決めてブラジルが先制した。

 日本の攻撃は停滞し、ブラジル人たちはそのまま試合を終わらせることができるはずだった。だが、彼女たちの守備における2つのミスが、池田監督のチームに勝利への道を示した。

 1つ目は、文字通りの守備面のスリップで日本に与えられたPKだった。これは南米のチームにとって不運なものだったが、熊谷はブラジル人を相手に、2度目の失敗をする気配を微塵も感じさせず、自信満々に同点ゴールを決めた。

 日本の決勝点は、ブラジルのミスから生まれたものだったが、それ以上に素晴らしいスペクタクルなものだった。

 ラファエル・ソウザは疲れ切り、見当違いのパスを谷川の足元に届けてしまった。谷川はロレーナが大きく前に出ているのを見逃がさずに、少しの時間も無駄にすることなくループシュートを送り込んだ。このシュートが日本のベンチに歓喜をもたらし、ブラジルを絶望に突き落とした。

 ドラマチックなエンディングではあったが、日本人にとっては納得のいくパフォーマンスではなかっただろう。それでもこの結果が、池田監督のチームにベスト8進出を争わせることになった。なでしこの成長を確認するためにも、監督はナイジェリア戦で、より説得力のあるパフォーマンスが見られることを期待するだろう。

(マイケル・チャーチ/Michael Church)



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マイケル・チャーチ

アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。

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