J3にまさかの不覚…J1主力&サブ組の差を露呈、監督吐露「人生の中でも本当に悔しい」【コラム】
天皇杯の2回戦で磐田がJ3宮崎に1-2敗戦
ジュビロ磐田は天皇杯の2回戦でJ3のテゲバジャーロ宮崎に1-2と敗れた。1-1で迎えた後半アディショナルタイムに、宮崎のカウンターに対して、右サイドのカバーに回ったMF中村駿がMF力安祥伍をボックス内で倒してしまいPKに。MF井上怜にしっかりと決められて勝負が決した。
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中村は「最後の僕のプレーがすべてだと思うので。90分頑張ってる仲間にも申し訳ない」と反省を語るが、左サイドからDF高畑奎汰が出した縦パスをMF金子翔太がコントロールしきれず、宮崎のディフェンスに引っ掛かり、素早く反対サイドを攻められたところでのボランチMF藤原健介の対応など、すべてが厳しさに欠けており、個人だけの責任で済ませるべき失点シーンではない。
そもそも主導権を握れていた前半のうちにチャンスを仕留めることができず、後半にセットプレーから中村の右足キックにMFブルーノ・ジョゼが合わせてリードは奪ったが、磐田の強度に慣れて、やれるという自信も強めてきた宮崎の交代選手に守備で手を焼いて、オープンな流れに付き合ってしまった。
90分通してのクオリティー、ゲーム運びの不味さなどが最後のPKになって、象徴的に突き付けられたと言わざるを得ない。宮崎からすればクラブの新たな歴史を飾る勝利だが、磐田からすれば、自分たちからみすみす手放してしまったような敗戦であり、その影響を最も被るのはほかでもない、この試合に出ていた選手たちだ。負けが許されない試合で、彼らを起用した横内昭展監督に責任はあるが、応えられなかった選手たちは本当に大きなチャンスを手放してしまった。
ここまでJ1の17試合で勝ち点18を積み上げてきた磐田だが、より自分たちから主導権を握る時間を増やすために、この期間でもう一度、1つ1つのパスや攻守の1対1といった原則的な要素のベースアップに努めてきた。それらを確認する意味で、宮崎戦のメンバーのパフォーマンスというのが非常に大事だったことは間違いない。
横内監督も「そういう力が本当に明日、ピッチ上で発揮されれば今後のリーグ戦に向けて、戦力になってくれると思いますし、そういう戦力がまた出てきて、新しい競争が生まれる。やっぱり競争があって初めてチームが強くなっていく」と語っていただけに、天皇杯という大会を失ってしまったことはもちろん、対戦相手の宮崎が磐田を相手にやれている手応えを感じる前に叩く流れに持っていけなかったことに悔しさを感じているはずだ。
「本当に落としてはいけないゲームを落としてしまい、悔しい思いでいっぱい」と横内昭展監督。ルヴァン杯に続く、チームにとって初戦での敗退となり、シーズンでの公式戦は40試合に。現在16位の磐田はリーグ戦の残り21試合に向かっていくことになる。
天皇杯での悔しい敗戦を経て…リーグ戦で問われるパフォーマンス
ルヴァン杯ですでに敗退していた磐田は代表ウィークの期間に公式戦は宮崎戦しかなく、前節のサンフレッチェ広島戦から中11日だった宮崎戦で、スタメン11人をすべて入れ替えるというのは大きな決断だったが、結果としては裏目に出たと言わざるを得ない。横内監督がリーグ戦にあまり絡めていなかったメンバーでスタメンを組んだのは、ここから夏場を含むシーズン後半戦に向けて、選手層を底上げしたい狙いがあったはず。
ただ、結果的にリーグ戦の主力メンバーとベンチ外の選手を含めたサブ組の差を露呈してしまった。選手の実力的な問題もあるかもしれないが、ルヴァン杯の早期敗退も、リーグ戦に絡めていない選手の試合勘の不足につながったところもあるだろう。横内監督は試合後に「天皇杯のピッチでは取り戻せないんですけど、リーグ戦で悔しい気持ちを表現できるかどうか。それがサポーターに我々が伝えていけることだ」と選手に伝えたという。
「この敗戦を忘れてほしくない。この敗戦、僕のサッカー人生の中でも本当に悔しい気持ちになった。同じくそう思っている選手のたくさんいると思うので。必ずリーグ戦で、ピッチでまた必ず取り返したい」
もちろんヤマハスタジアムのスタンドからこの敗戦を見送ったリーグ戦の主力メンバーも、この衝撃的な敗戦はチーム内で共有して、気持ちを引き締めてアウェーの試合に臨むはず。スタメンは広島戦と大きくは変わらないはずだが、宮崎戦で来日初ゴールを決めたブルーノ・ジョゼの活躍は数少ない収穫だ。これまでどおりなら4-2-3-1の右サイドでMF松本昌也に代わり途中投入されるが、スタメンでもおかしくない資質を見せている。
あとは最後にPKを与えてしまった中村もコンディションは怪我明けから徐々に上がってきているだけに、宮崎戦に90分出たことで、どのぐらい上がってくるか。パリ五輪に向けたU-23日本代表のアメリカ遠征に参加していたDF鈴木海音のコンディション次第で、宮崎戦でスタメン起用されたDF森岡陸の出番があるかもしれない。また開幕戦から多くの試合にスタメン出場しながら、広島戦を欠場していた、大卒ルーキーのMF植村洋斗の状態回復が気になるところだ。
額の骨折で離脱していた12試合で11得点のエースFWジャーメイン良も、横内監督が想定していたよりも回復が早く、週明けの検査結果も良好。FC東京戦(16日)に間に合うかは不明だが、数試合中の試合復帰が見込まれる。ヘッドギア姿でゲーム形式のトレーニングに励むジャーメインも「得点というところで減った部分はあるので、そこは自分が結果出している自信を持って入って行けたら」と語る。
まずは週末のFC東京戦で、勝ち点3をもたらすことがチームの大きな目標になる。守護神のGK川島永嗣やリーグ戦フル出場のMF上原力也など、これまでリーグ戦で主力を担ってきた選手たちが、ほぼほぼスタメンに名を連ねるだろう。そこに天皇杯のピッチ上で悔しい思いをした選手、サポーターに悔しい思いをさせてしまった選手たちが1人でも2人でも絡んで、勝利に貢献できるか。ここからリーグ戦しかなくなるシーズンの指標にもなり得る。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。