森保Jレギュラー争いに「台頭」 果敢な仕掛け、全力守備…対戦国は「実に扱いづらい選手」【コラム】
【カメラマンの目】シリア戦で躍動した攻撃陣のなかでひと際光彩を放った1人の選手
試合開始から一気に相手を攻め落とそうとする日本代表の姿勢に、シリア代表は早々に白旗を上げた。望遠レンズを装着したカメラでサムライブルーの選手たちを追う。日本の選手たちは誰もがボールを素早く敵ゴールへと運ぼうとする意識が高く、ドリブルとパス、個人技と連係プレーを駆使した多彩でスピーディーな攻撃で、シリア守備網に風穴を開けていった。
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最前線の上田綺世などはシリアDF陣の間を強引に割って入る、真っ向勝負を挑んで突破するなど力強いプレーを見せた。日本はこの背番号9のストライカーの先制点を皮切りに5ゴールを奪取。ウイングバックのポジションにも攻撃的な選手を起用した采配が見事に的中する結果となった。
躍動した攻撃陣のなかでひと際光彩を放ったのが、ウイングバックでプレーした中村敬斗だ。相手の守備選手に1対1の勝負を果敢に仕掛けては前線へと進出し、左サイドからの攻撃を活性化させた。先制点のアシストを含む攻撃はもちろん、ピッチレベルからカメラのファインダーに捉えた中村は、守備に回ってもボールをキープしたシリアの選手へと素早く間合いを詰めて仕事をさせなかった。45分とプレー時間は短かったが、攻守に渡って存在感を発揮した。
ボールテクニックで言えば、日本には中村より優れた選手はいる。だが、中村のアグレッシブな意識はピッチ上で力強く、そして鋭いプレーを生み出した。中村のプレーをシリアの選手の目線に立って言えば、攻撃の際には闘争心を削がれるように激しいマークで対応され、守備に回れば大胆に攻撃を仕掛けてくる、実に扱いづらい選手として映ったことだろう。
アジア2次予選を突破し、これからの最終予選とワールドカップ本大会を見据えれば、相手が同等、あるいは格上となった場合、見栄えの良いプレーをする選手より、中村のようなテクニックもあるが、なにより激しさで勝負するタイプは、綺麗事だけでは勝てない国際試合において、より威力を発揮することが予想される。
この試合で日本は3バックでスタートし、後半には4バックへとシステムを変更した。攻守に割り当てられるポジションの数は、採用するフォーメーションや相手のレベルによって異なっていくだろう。
そうしたなかで、中村の台頭は先のミャンマー戦と合わせた2連戦で招集が見送られた、本来ならチームの中核を担う実力を持った選手の存在も合わせて考えれば、攻撃陣のレギュラーを目指す争いをさらに加速させることは間違いない。
アジアカップで下降線にあったチーム状況は、再び上昇へと転じた。この完勝劇は選手たちに、より高いレベルのサッカーを求める意識も燃え上がらせたように見えた。アジア最終予選に向けてすでに突破を決めていた日本だったが、チームの骨格を成す選手たちを招集した意義のある試合となった。
徳原隆元
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。