J1リーグ「優良&期待外れ助っ人」査定 5億円ブラジル人が急ブレーキ…大当たり新戦力は?【コラム】

今季新加入の助っ人選手たちを査定【写真:徳原隆元】
今季新加入の助っ人選手たちを査定【写真:徳原隆元】

今季加入した新外国人選手に絞って“期待以上”と“期待外れ”を評価

 J1リーグの序盤戦では、外国人助っ人の活躍も目立つ。ひとくちに“優良助っ人”と言ってもすでにJリーグでの実績があり、ある程度、活躍が想定できた選手と来日1年目で未知数だった選手で、評価基準は変わってくる。またJリーグの中での移籍で、新天地の環境にうまくフィットしている助っ人もいる。そこで今回は新外国人に絞って“期待以上”と“期待外れ”を評価した。もちろん、現時点で“期待外れ”の選手も序盤戦の段階であり、ここからの挽回への期待を込めている。

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■期待以上の新助っ人

 インパクトという意味ではイラン代表FWシャハブ・ザヘディ(アビスパ福岡)がナンバーワンだ。加入が3月7日でJリーグのデビューは第4節のFC東京戦の後半途中からの出場だった。その試合でいきなりMF松岡大起のゴールをアシストするとその後は1トップでスタメンに定着して、ここまで6得点2アシストを記録している。福岡の得点が13、そのうちザヘディが絡んだ試合で11得点という結果を考えても、いかに得点力アップに貢献しているかが分かる。

 新外国人ではDFドレシェヴィッチ(FC町田ゼルビア)も見事なフィットを見せている1人。昇格組ながら序盤戦で躍進を見せる町田で、ここまで13試合フル出場で堅守を支えながら、攻撃でも2得点をマークしている。北海道コンサドーレ札幌戦(第4節)の得点はコーナーキックから味方が競ったボールをフリーで合わせる形だったが、ヴィッセル神戸戦(第8節)では2点をリードされた後半アディショナルタイムに、パワープレーの流れで味方からのボールをうまくコントロールして右足で決めた。人に強いだけでなく、ゲームの中で必要なプレーを選択するサッカーIQと強いメンタリティーを備えた、まさしく“優良外国人”だ。同じセンターバックではACL(AFCチャンピオンズリーグ)の常連である韓国の浦項スティーラースから来たDFハ・チャンレ(名古屋グランパス)の安定感も見逃せない。

 そのほか、ターゲットマンとして存在感を見せながら、ここまで4得点を記録しているブラジル人の大型FWマテウス・ペイショット(ジュビロ磐田)、サイドから突破力と得点力の両面を見せるセルビア人FWチャヴリッチ(鹿島アントラーズ)、中盤のアンカーから正確なボール捌きとパスワーク、タイミングの良い飛び出しからのフィニッシュなど、引き出しの多いプレーで2得点2アシストを記録しているスウェーデン代表MFサミュエル・グスタフソン(浦和レッズ)は特筆に値する。グスタフソンに関しては浦和が4-3-3をベースとした新しいスタイルを構築中であり、周囲との関係がより良くなれば、さらに対戦相手にとって怖い選手になりそうだ。

 また初来日ではないが、札幌から加入して鋭い仕掛けとクロスを繰り出すMFルーカス・フェルナンデス(セレッソ大阪)はすでに4アシスト。ここまで10得点と好調のFWレオ・セアラと抜群の相性を見せている。また、J2の清水エスパルスから移籍してきたFWオ・セフン(FC町田ゼルビア)が、新天地で圧倒的な空中戦の強さを発揮していることも見逃せない。エースのFWエリキが怪我から復帰してきており、J1でも最強クラスの2トップが誕生するのか注目だ。降格圏に苦しむサガン鳥栖の前線で高い身体能力を発揮し、早くも6得点を記録している元横浜FCのブラジル人FWマルセロ・ヒアンは21歳ということもあり、夏場から後半戦にかけて、鳥栖を浮上させるトリガーになり得る。

鹿島のギリェルメ・パレジと川崎のエリソン【写真:徳原隆元】
鹿島のギリェルメ・パレジと川崎のエリソン【写真:徳原隆元】

G大阪ウェルトンの奮闘ぶりは伝わるもやや物足りない出来に

■期待外れの新助っ人

 ここまで奮闘ぶりは伝わるが、開幕前の期待値からするとやや物足りないのはFWウェルトン(ガンバ大阪)だ。サイドから迫力ある仕掛けを見せるが、肝心の決定機に決めきれないというシーンが多い。ここまで24本のシュートを打って1得点。第9節の浦和戦では右のニアゾーンからFW坂本一彩のゴールをアシストして勝利に導くなど、チャンスメイカーとしての特長はそれなりに発揮しており、守備の貢献も見逃せないが、シュート数に得点が付いてくるとG大阪の浮上にもつながるだろう。

 評価が難しいのはブラジル人FWエリソン(川崎フロンターレ)だ。前評判どおりの推進力と決定力で開幕2試合3得点を挙げていたが、そこから怪我の影響か、やや低調なパフォーマンスが続いてしまった。アタッカーにも関わらず、警告が多い傾向もあり、第13節の札幌戦で出場停止となってしまった。その札幌戦でハットトリックを記録したのが38歳のバフェティンビ・ゴミスだ。ブラジルの名門サンパウロからエリソン獲得にかかった資金は5億円とも推定され、実際にドイツの移籍専門サイト「トランスファーマルクト」による市場価値は300万ユーロ(約5億円)。どう起用されていくのか気になるところだ。

 そのほか途中出場で限られた時間ながら、なかなか明確な結果を出せていないブラジル人MFギリェルメ・パレジ(鹿島アントラーズ)や、中盤での守備能力は高いが、周りとの連係不足もあり失点につながるミスが目立ったMFレオ・ゴメス(ジュビロ磐田)、サイドアタッカーとして怖さは見せるものの波があり、結果も付いてこないFWマルコ・トゥーリオ(京都サンガF.C.)などはここからのフィットに期待したいところだ。

 ポジティブなインパクトを残せていない選手たちがいる一方で、そもそも怪我の影響などで、まだデビューすらできていない新外国人もいる。その代表格がノルウェー代表MFオラ・ソルバッケン(浦和レッズ)だ。タレント力に疑いの余地はなく、鳴物入りでの浦和加入だったが、もともとあった膝の怪我に加えて、感染症やほかの箇所の怪我など、コンディションが整わないまま5月を迎えた。セリエAのASローマからの期限付き移籍であり、現時点の契約期間は6月30日まで。すでに練習には復帰してコンディションを上げてきているが、ここからそれだけ公式戦の出場、そして活躍は見られるのか。レンタル延長の可能性も含めて注目が集まる。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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