若き日本代表が味わう「生みの苦しみ」 新監督の下、国際大会で経験する「本質的な差」【コラム】
U-16日本代表の廣山ジャパンがモンテギュー国際大会で奮闘中
フランスのパリから4時間ほど車を走らせたところにある街、プゾージュでU-16世代の第51回モンテギュー国際大会が開かれている。日本は今年から廣山望監督が指揮を執り始めたU-16代表が参加。メキシコやウェールズ、チェコといった国々とのグループリーグから、優勝を目指した戦いに挑んでいる。
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今大会に入る前、U-16日本代表は2つ遠征を行っていた。2月上旬にポルトガルで行われたアルガルベカップと、2月下旬から3月にかけてトルコで行われた国際親善試合だ。全6試合を戦ってきたなか、日本はここまで全敗を記録するなど、なかなか結果を残すことができていない。「将来A代表で中心となって活躍できる選手、そこに繋がる選手をどれだけ育てられるか」(廣山監督)をベースにチームを構築する中、「まだ個人戦術もそこまで出来上がってない選手も多い。本当にベーシックな個人戦術を高めることをしながら攻撃も守備も高めていきたい」とまだまだ産みの苦しみを味わっている状況だ。
これまでの2つの遠征を経て「課題はいっぱい出た」とする中で、「コンセプトどうこうはあるけど、まだそこまで言っていない」と語る廣山監督が、対戦相手との違いとして表現したのが両ゴール前を含めた勝負どころの差だ。
「やはり本質的なところの価値観の差がだいぶあると感じています。ゴール前を守ることや、ゴール前で時間とスペースがないところで奪いに行く、そういったところの勘がまだ働かなかったりする。例えば攻撃で、ちょっとボールがずれたからいいところに止めてから打とうとすると、やはり相手が2人も3人も守備に来て(打てなくなる)。逆に相手の選手はゴール前だとワンタッチでこっちが一番困るところに打ち込んでくる。そういう感覚はなかなかないし、こういうところに連れてきたからこそ感じるものがあると思う。日本だと1回ミスしても何とかなるシーンをやはりこっちでは許してもらえない。そういう経験はこれまでの遠征でもしてきていて、それをちょっとずつ積み上げて埋めていく作業をしているところです」
モンテギュー国際大会の初戦となったU-16メキシコ代表戦(0-1)でも、廣山監督の言う「本質的なところの差」が表出した。試合は日本の方がチャンスを作っていたと言えるが、ゴール前で迎えたチャンスをなかなか決め切ることができず。逆に後半、相手に一瞬の隙を突かれ、素早い攻撃からクロスを起点とした攻撃で失点。その失点が手痛いものとなり、追いつくことができないまま敗戦を喫した。
重要な局面でゲームの流れを掴めず、一方で抑えなければいけないところで相手に得点を許してしまう。あるあるの展開ではあれど、勝負の勘所で相手に上回られてしまった。
ただ、これが若い選手たちにとっては確かな経験値となる。日本では経験できないことを欧州の地で学ぶ。それはまたとない機会だろう。
「本質的なところの差は結構根深いと思います。それでも、これが一番近道というか、もちろん帰って日常があるのでJの下部組織なり、高体連なりで足りないところを伸ばすことはやらなければいけないですけど、そもそもの足りてない部分に気づきやすい。逆に本当に圧倒的な差があるかといったらそんなことはなく、日本の選手の方が良い部分もいっぱいあると思うんです。ただ、さっき言ったように本質的なゴールに向かうところ、ゴールを守るところからサッカーを作っていくところは少し足りていないと感じています」
一方で、そういった状況の中でも廣山監督は“勝利”が必要であるとも説いている。
「今日の試合もそうですけど、勝てなかった、自分が決めきれなかったということに悔しさを感じない選手はいない。そういう意味では成長に繋がる試合になったのは間違いないです。あとは、こういう経験を積み重ねながら国際舞台で勝っていかなければいけない。若い世代とはいえ勝つ習慣をつけていかなければいけないと思います」
今大会はグループリーグの順位により最終的に順位決定戦へと進むことになるため、初戦の敗戦は大きな痛手と言っていい。だが、大会が終わったわけでもない。第2戦のウェールズ戦では2-1の初勝利を飾った。「ここでしか感じられないもの、感じたものを次の試合で少しでも表現できる選手がいると思う。4試合あれば、その4試合で成長する選手もいる。そこの変化を形にしてあげたい」とは廣山監督の言葉。U-17ワールドカップを目指すチームは、欧州の地で1つずつ経験を積み重ねながら成長への歩みを進めている。
林 遼平
はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。