勝負師キューウェルの矜持 リバプール栄光の7番が「残り30分」で示した“横浜FMイズム”【コラム】

今季から横浜FMの指揮を執るハリー・キューウェル監督【写真:徳原隆元】
今季から横浜FMの指揮を執るハリー・キューウェル監督【写真:徳原隆元】

横浜FMが開幕戦で東京Vに劇的な逆転勝利

 横浜F・マリノスは2月25日、J1リーグ開幕戦で東京ヴェルディと対戦し、2-1で勝利。ハリー・キューウェル新体制でJ1初勝利を飾った。苦戦する時間帯が続いたものの、試合時間の残り30分強で仕掛けた“4トップ”で流れを引き寄せ、終盤の連続ゴールで劇的な逆転劇を演じた。そこには、リバプールで栄光の7番を背負った“勝負師”キューウェル監督の矜持が垣間見えた。

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 16年ぶりにJ1復帰を果たしたヴェルディとの“オリジナル10”同士の開幕戦は、国立競技場に5万3026人を動員。前半7分にセットプレーから先制点を献上するも、後半44分にハンドで獲得したPKをFWアンデルソン・ロペスが決めると、同アディショナルタイムにはDF松原健がミドル弾を叩き込み、土壇場でスコアをひっくり返し、2-1で勝利を収めた。

 試合序盤、横浜FMは4-3-3システムでインサイドハーフが高いポジショニングを取り、両脇のハーフスペースを陣取る“キューウェルカラー”が滲み出ていた一方、最終ラインはアンジェ・ポステコグルー時代、ケビン・マスカット時代のハイラインと比較すると、やや低めのライン設定であることが見受けられた。

 前半はヴェルディの対策に苦しむ展開となった。最終ラインから前線にかけた距離感のギャップを突かれるように、アンカーのMF喜田拓也への包囲網を形成されると、喜田へのパスを狙われて高い位置でボールを奪われるケースが続き、試合の主導権を握られることに。そこでキューウェルは途中からMF渡辺皓太をボランチの位置へとシフト。ビルドアップの逃げ道が増えたことで、ようやくパスワークが円滑に回り始めた。

残り30分強で踏み切った超攻撃的4トップ

 しかし、ヴェルディの堅守を打ち破るまでには至らないと判断すると、後半11分にキューウェルはキャプテンの喜田とハードワーカーのMF水沼宏太を下げ、FW宮市亮、FWヤン・マテウスの俊足アタッカー2枚を同時投入。残り30分と少々という段階で、超攻撃的な4-2-4システムへと舵を切った。宮市とマテウスで両サイドをピン留めし、FWエウベルを中央で自由にプレーさせることで、ヴェルディの守備陣が徐々に間延びし、一気にマリノスのチャンスが急増した。最終的にはラスト5分で2得点を奪う勝負強さを見せつけた。

 試合後、キューウェル監督はヴェルディの対策を前にプラン修正を強いられたことを認めつつ、「マテウスと宮市のところでパワーと前方向に向かう動きが増えてチャンスも増えたと思う」と、両選手の投入が明確な合図になったと振り返り、「相手がどう来ても自分たちがやろうとしていることをやった結果、勝利につながったのではないか」とコメント。残り30分強の段階で横浜FMが背負ったリスクが勝利の報酬に還元されたことに満足感を示していた。

 ポステコグルー・マスカット政権時のような、サイドバックの中盤化やハーフウエーラインに迫るハイラインといった大胆不敵な戦術と比べ、キューウェル監督は規律性を重んじ整理整頓されたチーム作りを浸透させている印象を覚えた一方、勝負どころでは4トップ、5トップの配置を厭わないリスクを背負う采配には、横浜FMイズムへの適正力を感じた。リバプールの偉大なる背番号「7」を背負ったキャリアを持つキューウェルの“勝負師”としての矜持を今季は楽しむことができそうだ。

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