女子サッカー引退→フットサル転身 一度は「スパイクも全部捨てた」元リトルなでしこの信念

カフリンガボーイズ東久留米の中村みづき【写真:勝又寛晃】
カフリンガボーイズ東久留米の中村みづき【写真:勝又寛晃】

カフリンガ東久留米の一員として出場も、SWHレディース西宮に0-4で初戦敗退

 かつて女子サッカー界で期待を集めていた才能の姿が、JFA(日本サッカー協会)第20回全日本女子フットサル選手権にあった。2月10日に開幕を迎えた女子のフットサルチーム日本一を決める大会に、関東代表として出場したカフリンガボーイズ東久留米の8番FP中村みづきは、かつて年代別の女子日本代表でもプレーし、なでしこジャパンでの活躍も期待された。

 浦和レッズレディースの下部組織からトップチームに昇格。早稲田大学で大学サッカーを経験したのち、ニッパツ横浜FCシーガルズに加入していた。その後、2018シーズンをもってサッカー選手のキャリアに終止符を打っていた。ベスト8に進出した2012年のU-17女子W杯時代には、そのプレーぶりから「女・遠藤保仁」とも称されていた選手として、覚えている女子サッカーファンもいるだろう。

 そんな彼女の所属する東久留米は、現在関東リーグに所属している。女子フットサル版の皇后杯である全日本女子フットサル選手権では、初戦で日本女子フットサルリーグのSWHレディースと対戦。カテゴリーが上の相手に挑んだ東久留米だったが、0-4と完敗を喫した。

 試合後、中村は「全然良い形でボールを持てませんでしたし、守備も引いたところからセットして挑もうとしたのですが、それが全然しっくりこなくて。前半にそれでやっていたのですが2失点して、引いたところから押し上げていきたかったのですが、(西宮は)みんな持ち方とか探り方が上手くて、引いたところから、さらに下がってしまって守備でハメきれなかったのが良くありませんでした。後半は負けていたので『前から行こう』と戦い方を変えてプレスをかけてみたのですが、やっぱり相手は上手かったですね。回避の仕方も上手くて、何もできなかった感じです。でも、めっちゃ勉強になりました」と、前後半プレーイングタイムで40分の試合を振り返った。

 サッカーを引退してから、中村はしばらくフットボールから離れていたという。「3年ほどブランクがあって、やっとボールが蹴りたくなったんです。本当に引退した時はスパイクとかも全部捨てて、『もう蹴らない』と思っていたんです。ボールを蹴ることが楽しくなくなっちゃって」と、当時の心境を語った。

 それでも時間が経って、もう一度ボールを蹴りたくなり、練習は週に1回という東久留米に加入した。関東リーグでプレーする中村だが、すでに日本女子フットサルリーグのチームも、その存在に注視していた。この日、対戦した西宮もそんなチームの1つ。上久保仁貴監督は「めちゃ上手いですよね、あの子。トリムカップの時から見ていて、カフリンガにいることは聞いていました。スカウティングもしましたが、めちゃくちゃ良いですよね。技術もあるし、高さもあるし、両足蹴れる。どこでもやれると思いますよ。どのチームでも、どのポジションでも。本当に使い勝手が良さそうです。フットボールのスキルが本当に高い。試合前のスカウティングでも、選手たちに伝えていました」と、警戒していたことを明かした。

 女子フットサル日本代表のFP江川涼も「試合前に見た対策の映像でも彼女はピックアップされていて、『8番はかなり上手いし、気を付けた方が良い』と言われていました。戦った印象は足元の技術もあるし、シュートもあるから怖かったですね。本当にチームとして警戒していたので、あまり仕事をさせなかったと思いますが、それでもボールも持てるし、パスもできるし、なんでもできる選手で上手でした」と、対戦した印象を口にした。

 女子フットサルは、FIFA(国際サッカー連盟)が重い腰を上げて、女子フットサルワールドカップ(W杯)の設立を宣言したばかり。28歳となった中村が本格的に競技志向になれば、再び日の丸をつけることも可能性も十分ある。だが、「フットサル、楽しい。楽しいけど、めっちゃ難しい」と言う彼女に、現時点でその意思はない。

「そういう熱じゃないんですよね。いまは上のチームを負かせたいんです。今日とか、何も爪痕を残せなかったので。そこでちゃんと戦えるような選手になりたいと思っています。カフリンガは、良いチームですしね。今はフットボールを楽しみたいんです。サッカーの時も、早稲田大学時代に、当時めっちゃ強かったINAC神戸に勝ったんです。そういうの、めっちゃ楽しいじゃないですか。それをしたいんです」

 全日本女子フットサル選手権では敗退となった東久留米だが、2月23日から25日には再び地域女子フットサルチャンピオンズリーグという全国大会に関東代表として出場する。「今回の経験を、地域チャンピオンズリーグで生かしたいと思います」と前を向く彼女が、フットボールを楽しめていることが、何よりも大切なのかもしれない。

(Futsal X・河合拓 / Taku Kawai)



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