FC東京の悲願・リーグ制覇へ “変わらぬベテラン&成長中の若手”が融合「責任が伴う」【コラム】

FC東京でプレーする長友佑都【写真:徳原隆元】
FC東京でプレーする長友佑都【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】長友の変わらぬ姿と、若手の変化が表れたトレーニングマッチ

 薄曇りだった空は次第に灰色へと変わり、冷たい雨が選手たちの足元を濡らしていく。ピッチでは22人の選手たちが技術と体力をぶつけ合っている。そうした熱気の輪から離れて、ピッチに隣接する屋内施設では、すでにプレーを終えた長友佑都が1人、クールダウンのためのランニングを黙々と行っていた。

 2月3日、FC東京はキャンプ地の宮崎でサンフレッチェ広島とトレーニングマッチ(30分×4本/2-1)を行った。長友は4本のうちの前半の2本に出場。出番を終えたベテランDFの姿を静寂に包まれている屋内施設で見つけ、そっとカメラを向けた。

 その姿を見て、こうした地道で決して手を抜かない身体との向き合い方が、長きに渡ってプロサッカー選手としてプレーし続けられている理由なのだと改めて感じた。

 FC東京は広島とのトレーニングマッチにおいて長友もプレーした前半部分で、若手の松木玖生や荒木遼太郎、バングーナガンデ佳史扶らが躍動。彼らFC東京の次世代を担う若手選手たちは、好調を実感させるプレーを随所で見せた。

 もちろん、ダイナミックな推進力で前線へと進出して行く姿は言うまでもない。だが、そうしたゴールへの直接的なプレーではないところでも好調さが散りばめられていた。

 まず松木だが、以前から彼の姿をカメラのファインダーで捉えると、目についていたのはピッチ全体を良く見ているということだ。ボールを保持している時、していない時に区別なく首を振って仲間、敵の位置を把握し、そのうえでパスやドリブルといった最善となるプレーを選択している。

 トレーニングマッチだったとはいえ、この対広島戦での松木には、その動作が顕著に見られた。具体的には敵、味方が密集する局地戦において、ボールを受ける前に後方へと振り返り、接近してくる相手DFの地位を確認したり、自陣ゴール前で相手の攻撃となるセットプレーに備える時も周囲を見渡して、両チームの選手の配置を確かめていた。短い時間、時に一瞬で状況を把握し、有効となる一手を打つ判断力にさらに磨きがかかったと感じた。プレーにも余裕があり視野も広がったようで、供給するパスの領域も拡大したように感じた。

 守備面でもボールを持った相手選手へのアプローチが素早く、ボールハンティングとしての能力の高さも見せつけた。松木はもはやFC東京の中盤に欠かせない選手と言える。

荒木のボディーバランスは上昇気流に乗っている

 背番号71の荒木も昨年の停滞感を振り払うように溌剌としたプレーでチームを活性化させた。好調さはキレのある動きの根幹となるボディーバランスの良さに現れ、こんな場面があった。

 雨中戦となったゲームでは、当然ピッチはスリッピーとなる。シュートを打った荒木は体勢を崩して尻もちをついた。ボールは広島GKがキャッチし、形勢は逆転して反撃に遭う。ここで広島GKから守備陣に渡されボールの動きに素早く反応した荒木は、間髪入れずに立ち上がると猛然と敵選手のマークに向かった。

 また、相手選手との激しいコンタクトプレーで膝をついてしまっても、そのまま倒れることなく、体勢が崩れながらも持ち応えてすぐにプレーを続けていた。その動きはしなやかであり、鋭さも兼ね備えボールへの反応も早い。チーム移籍で心機一転、荒木はサッカー選手として再び上昇気流に乗ったようだ。

 FC東京の攻撃は松木、荒木が個人技を前面に出して敵守備網に挑んでいただけでなく、例えば左サイドではバングーナガンデや遠藤渓太らがコンビネーションプレーで突破していく多彩な崩しが見られた。バングーナガンデは言う。

「試合に出るということはすごく責任が伴い、1人1人がチームの中心という自覚を持ってやることが重要だと思う」

 チームの一体感も感じているようだ。

「みんなとのつながりができていることを感じている。ミーティングでのコミュニケーションの量はこれまでと比べてすごく増えた。森さん(森重真人)だったり(長友)佑都さんが、僕たちが(言葉を)発信し易い環境を作ってくれている。去年と比べて、どんどん若手が発信していけているなという感覚があって、そういうみんなが伸びのびとやれる環境に向かっていければ、良い結果が出ると思う」

チームのまとまりをバングーナガンデも実感

 あくまでもこのトレーニングマッチで判断する限り、前半部分に出場した松木、荒木、バングーナガンデら若手と長友といったベテランが融合したチームは戦術、個人技の両輪で試合巧者の広島を圧倒した。そのプレーにはリーグ戦に旋風を起こす可能性を高く感じた。

「(出場した前半部分を)無失点で抑えられたのは大きな収穫。最後に危ないシーンがあったが、試合が終わるとすぐに修正の話をみんなでできたところが良かった」とバングーナガンデが言ったように、チームとしての纏まりもより強固となってきている。

 シーズンの入り方さえ上手くいけば、FC東京が2024年の主役となることは十分に可能

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