日本代表に足りなかった“熱意”の正体 主将・遠藤航に注文「変えようとする選手」への進化【現地発】

遠藤航のキャプテンシーに注目【写真:Getty Images】
遠藤航のキャプテンシーに注目【写真:Getty Images】

イランに敗れてまさかのベスト8で大会終了

 森保一監督率いる日本代表は、2月3日にカタール・ドーハで行われているアジアカップの準々決勝を戦い、イラン代表に1-2で敗れた。5度目の優勝を目指していたなかで、まさかの8強敗退。あまりに早い幕引きとなった。大会を通して牽引してきた主将MF遠藤航。全5試合フル出場で疲労もあったなか、遠藤のキャプテンシーに注目する。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)

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 あっけない最後だった。日本は前半28分にMF守田英正のゴールで先制し、リードして後半を迎えたが、後半10分に失点したシーンでは、FWサルダル・アズムンに縦パスが入った瞬間にDF板倉滉が相手MFに背後を取られ、同点弾を許してしまった。その後は白熱の攻防が続き、日本の守備陣もイランの猛攻に耐えていたが、後半アディショナルタイム3分に相手がペナルティーエリア内、頭で落としたボールを板倉とDF冨安健洋が譲り合うような形になり、相手DFにかっさわれたところを板倉が足をかけてしまってPKを献上。これを決められてしまい、敗退が決定した。

 3大会ぶり5度目の優勝を目指していたなかで、課題が露呈した。後半に押し込まれた展開で流れを切ることも、反撃することもできず、手詰まり感が漂った。中盤から縦へボールも入らず、途中出場のMF三笘薫とMF南野拓実はほとんど何もできなかった。守備も耐えられずに、2失点。何よりも流れを変えたかった。

 それは監督の交代策による外的要因も候補の1つ。一方、ピッチ上で“カツ”を入れることも1つのやり方だろう。そのピッチ上での“カツ”は遠藤に任せたい。

 例えば、グループリーグ(GL)第3戦インドネシア戦。第2戦のイラク戦(1-2)で敗れ、絶対勝利が求められるなか、DF冨安健洋は最終ラインから声を張り続けた。「行け!」「行け!」。前線へ向けたカツ。プレスにいくタイミングを声で表現し続けた。

 この一戦後、MF久保建英は冨安について「どこもやっていることなので当たり前のことを言っているけど、それをキャプテン以外の人が言ってくれるのはいいのかなと思う」と話していた。

 プレスへの合図はポジションによるものの、このように1つギアを入れる、最後1歩頑張らせるというところは主将の声や仕草で表現してもらいたいところだ。

 森保ジャパンは第2次政権ですぐに主将を決めず、6月シリーズ途中のミーティングで決定した。遠藤が引き受けてからまだ1年も経っていない。そのなかで、監督と選手の間に立ち、試行錯誤してきたのは理解する。自身もカタール・ワールドカップ(W杯)時から個のレベルアップを図るためにイングランド1部リバプールでプレーしている。

 だからこそ、冨安が話していた「後半のような難しい展開の時に、黙ってやるというか、ただただ淡々とやるだけじゃなくて、何か変えようとする選手がいたりだとか、今は耐えるぞっていう声をかけるだとか、という選手がもっともっといないとそれは勝てないよな、と」というような選手の1人として出てきてもらいたい。

 イラン戦前日の韓国対オーストラリア。延長120分の死闘から中2日で臨んだ韓国は1点ビハインドで後半アディショナルタイムに突入。ここで、遠藤と同じ全試合フル出場のソン・フンミン主将は最後の力を振り絞ってPKを誘発。延長に直接フリーキック(FK)を決めた。ギリギリの体力で腰に手を置きながらも周囲を鼓舞して戦う姿勢を自ら示していた。

 主将にもさまざまなタイプがある。遠藤は静かに背中で見せるタイプだろう。だが、ここは日本代表の場。世界一を目指している。かつての長谷部誠や吉田麻也がそうだったように。ここぞという時に引っ張れる存在に必ずなれるはずだ。

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)



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