新生・浦和レッズ「最新ポジション争い」考察 “へグモ流”大胆抜擢も…最激戦区は?【コラム】

浦和の新シーズン陣容を考察【写真:Getty Images】
浦和の新シーズン陣容を考察【写真:Getty Images】

へグモ新監督の下、ポジション争いの“ホットゾーン”5つをピックアップ

 浦和レッズはノルウェーの名将として知られるペア・マティアス・へグモ新監督の下、新シーズンを戦う。マチェイ・スコルジャ前監督の下、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)ファイナルやクラブ・ワールドカップなど、年間60試合を戦った昨年と打って変わって、ACLもなければ、サポーターの暴力行為を防げなかった処罰として天皇杯の出場資格もない。大会フォーマットが事実上のトーナメント制に変わったルヴァンカップがあるものの、前向きに捉えるなら“リーグ戦に全振り”できるのが2024年シーズンだ。

 タイトルへの意欲は補強にも表れている。しかも、へグモ監督の基本システムである4-3-3にマッチした選手たちが多く加入し、基本1週間に1試合というレギュレーションで、昨年の浦和を支えた主力選手たちと激しいポジション争いを繰り広げそうだ。そんななかで、ここではポジション争いの“ホットゾーン”5つをピックアップした。

■右サイドバック

 昨年キャプテンも担った“重鎮”酒井宏樹に、湘南ベルマーレから加入した石原広教が挑む。石原は酒井の実力や経験を認めつつ、あえて高い壁に挑みに来たことを強調している。酒井も昨シーズンは過密日程で競争どころではなかった状況を振り返り、今年は健全に、週末の試合に向けて競争できることを歓迎している。

 酒井の対人の強さに関しては説明不要かもしれないが、石原も湘南で鍛えてきた粘り強さがある。また一瞬のスピードに関しては酒井を上回れることを石原は主張している。2人のスペシャリストに加えて、左との兼任で宇賀神友弥(←FC岐阜)、さらに前体制ではアレクサンダー・ショルツと関根貴大もこのポジションをこなしている。FC東京から加入し、キャンプでは左サイドバックでテストされている渡邊凌磨も経験のあるポジションだが、酒井か石原に怪我がなければ基本は2人の競争が続きそうだ。

■アンカー

 昨シーズンは4-2-3-1がメインだったなかで、岩尾憲が「6番」の役割として、中盤の底に構えることが多かった。“へグモ式”4-3-3ではヘソとなるアンカーの候補はヘッケンから補強したスウェーデン代表のサミュエル・グスタフソンが本命と見られる。単独でボールを奪う能力があり、シンプルで正確なパス出しから機を見てバイタルエリアまで駆け上がる。

 そこに岩尾、インサイドハーフとのポリバレントで安居海渡が加わってきそうだ。またキャンプ前半では武田英寿もこのポジションでテストされていたが、インサイドハーフにシフトしたようにも見える。そのほか、ユース出身の堀内陽太、ここまでインサイドハーフがメインの伊藤敦樹も、ポテンシャル的には候補と言えるだろう。

ローマから新加入ソルバッケンは、右ウイングでの起用が有力か

■右ウイング

 開幕スタメンに向けては、ASローマから来たノルウェー代表の新外国人オラ・ソルバッケンと名古屋グランパスから加入した前田直輝による一騎打ちか。昨シーズンの主力だった大久保智明は怪我からの復調途上で出遅れており、そこの競争に加わってくるまでには少し時間がかかりそうだ。ソルバッケンと前田、大久保にも共通するのは左利きであること。“逆足”のほうが、右サイドバックの酒井や石原が外側から追い越しやすいメリットもあるポリバレント枠としては早川隼平がここに加わる。

 なおソルバッケンはクラブだと主に右ウイングだが、ノルウェー代表では左ウイングで使われることもある。左利きなので左サイドだとオープンスタンスにはなるが、オプションとしては有効だ。同サイドのファーストチョイスは松尾佑介と見られるが、ソルバッケンの起用法によっては激しい競争が発生しそうだ。また長期の怪我から復調中の安部裕葵、そしてインサイドハーフがメインと見られる小泉佳穂、関根も候補になる。

■左サイドバック

 昨シーズンは明本考浩、荻原拓也、大畑歩夢の3人でポジションを争っていたが、荻原と明本が欧州移籍。大畑だけが残った。そこに宇賀神がFC岐阜から復帰してきたが、さらなるスペシャリストの補強も考えられた。

 しかし、キャンプでヘグモ監督は渡邊を抜擢、最初のトレーニングマッチとなった沖縄SV戦でも、1本目のメンバーとして起用した。最初は立ち位置の確認などにぎこちなさも見られたが、回数を重ねるごとに適応して、左足の使用も柔軟に。現在は戦術的なタスクだけでなく、周りとの関係によってプレーを調整するなど、早くも自分のものにしつつある。まだ補強の可能性も否定できないが、技術が高く縦の推進力もある渡邊がこのポジションでブレイクしてもおかしくない。

 大畑も昨年のキャンプより明らかに状態は良さそうで、持ち前の戦術眼と攻守のセンスを“へグモ式”の中でも発揮し出している。ただ、彼の場合は順当ならパリ五輪の予選と本大会があり、合わせて2か月チームを離れることも想定される。現時点では3番手と見られる宇賀神もコンディションは良さそうで、ベンチ入り、出場の機会はありそうだ。

■左右インサイドハーフ

 最も候補の多いポジションで、へグモ監督も一番の迷いどころかもしれない。既存戦力では小泉、中島翔哉、安居、伊藤、早川、そして期限付き移籍を延長したタイ代表のエカニット・パンヤ、堀内、そしてキャンプでは同ポジションでテストされている関根がいるが、そこにレンタルバックのレフティー武田が加わっており、おそらく大久保も右ウイングとのポリバレントで候補になってきそうだ。

 ここは単純なスペシャリストの競争だけでなく、アンカーやウイングとの兼ね合いやセットプレーのキッカーも関わってくる。周囲との組み合わせも起用のカギになりそうだ。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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