青森山田DF「3年生と優勝したい」 悲痛の過去を支えた先輩たち&指揮官への恩返し誓う「暖かく迎え入れてくれて…」【高校選手権】

青森山田の小沼蒼珠【写真:徳原隆元】
青森山田の小沼蒼珠【写真:徳原隆元】

2年生DF小沼が先制弾

 1月4日に行われた第102回全国高校サッカー選手権準々決勝で、青森山田(青森)が昌平(埼玉)を相手に4-0で快勝した。前半2分に先制点を決めたDF小沼蒼珠は「飯塚戦、広島国際戦と立ち上がりあまりいいゲームができていない中で、レイさん(芝田玲)の古巣ということもあって、絶対に負けられない戦いでした」と試合を振り返っている。

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 小沼は自らのゴールで「チームを勢い付けることが出来てよかったです」と笑顔を見せた。1点を先取した青森山田は、続く前半4分にも小泉佳絃がゴールを決めてリードを広げており、まさにチームに勢いをもたらした先制点だったと言える。

 そんな試合はテクニカルな昌平が試合開始時に2トップで布陣しパワーで対抗しようとしてきていた。その点について小沼は気にはならなかったという。「やっぱ相手もパワーで、山田のパワーと戦おうという意志も伝わってきたので。そこは正木さん(正木昌宣監督)のミーティングでもあったんですけど、2トップで来たから、立ち上がりはしっかり山田の強さを見せて、俺たちの土俵に持っていこう」との話があったとのこと。そして実際に序盤に2点が取れて「入りのプレーで圧倒できたので。そこは良かったかなと思います」と話している。

 ちなみに小沼は先発では唯一の2年生ということで「3年生と優勝したいです。1メンバーとして優勝に貢献したいです」と話す。なぜならば「3年生がすごくいい先輩たちなので。日常生活でも、サッカー以外の部分もやっぱ尊敬できる部分がたくさんある」から。そんな「大好きな先輩たちと、まずは国立に行けた」ことを喜びつつ「国立に行って満足じゃなくて。しっかり次の試合市立船橋をなぎ倒したうえで優勝というのがあると思うので。しっかり次の試合も地に足を着けてやって行きたいと思います」と表情を引き締めていた。

 少し話が横道に逸れるが、小沼は今季、当初レギュラーではなかった。その小沼が3年生や正木監督に感謝する出来事があった。高円宮杯プレミアリーグEASTの7節の2023年5月21日にアウェーで行われた川崎フロンターレU-18戦でのことだ。

 後半40分の小林拓斗のゴールで2-1と逆転した青森山田は、2分後に米谷壮史に代えて小沼を投入。逃げ切りを図った。そんな同44分に小沼はPKを与えてしまい逃げ切りに失敗。2-2で試合を終える結果となった。試合後、呆然と座り込む小沼の姿が悲痛でメンタル面で立ち直れるのか心配になるレベルだった。そんな小沼はあの試合のあと、3年生や正木監督に手を差し伸べてもらえたのだという。

「やっぱり今の3年生の存在が大きくて」と話し始めた小沼は「結果ではあるんですが、自分としてはすごい落ち込んじゃって。なんであんなプレーをしたんだって思ったときもあったんですが、3年生が暖かく迎え入れてくれて。ああいったプレーをしても、笑顔で迎えて入れてくれましたし、その後の流経戦(流通経済大学付属柏・第15節)の活躍の場もあったりして徐々に立ち直れました」

 そう話す小沼は、3年生に加えベンチからでも起用を続けた正木監督のためにも優勝したいと決意を口にした。なお、小沼はゴールを嬉しいと話すがそれよりもテクニックのある昌平のドリブルの対応をコーチから褒められたことを喜んでいた。そして「しっかり守備で活躍するっていうところにもう一回立ち返って、やっていきたいです」と述べ、あまり良い思い出がないという市立船橋戦を見据えていた。

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江藤高志

えとう・たかし/大分県出身。サッカーライター特異地の中津市に生まれ育つ。1999年のコパ・アメリカ、パラグアイ大会観戦を機にサッカーライターに転身。当時、大分トリニータを率いていた石崎信弘氏の新天地である川崎フロンターレの取材を2001年のシーズン途中から開始した。その後、04年にJ’s GOALの川崎担当記者に就任。15年からはフロンターレ専門Webマガジンの『川崎フットボールアディクト』を開設し、編集長として運営を続けている。

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