パリ五輪世代「最強布陣」で起用すべき11人 現時点のベストは?…バイエルン福井の抜擢を推奨【コラム】
本大会出場権の懸かるU-23アジア杯に向けた最強布陣を考察
来年夏にはパリ五輪が開催される。これまでU-22日本代表として活動してきた大岩ジャパンも、いよいよU-23日本代表になる。パリ五輪のアジア枠は3.5。本大会に出場するには4月に行われるU-23アジア杯で3位以内に入るか、4位でアフリカとのプレーオフに勝利する必要がある。
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注目の大会を見据え「FOOTBALL ZONE」では「パリ五輪世代FILE」と題して特集を展開。今回は現時点で考えられるパリ五輪世代の最強布陣を考えたい。パリ五輪の本番にはオーバーエイジ3人が入ることも想定されるうえに、現時点で招集外でも、滑り込みを果たす人材も現れ得るだろう。
今回はあくまで現時点の最強布陣として考察。久保建英に関してはパリ五輪世代ではあるものの、ここまで一度も大岩ジャパンに招集されておらず、予選を兼ねたU-23アジア杯に招集できる可能性は限りなく低いため、対象外にしておきたい。
GKの鈴木彩艶(シント=トロイデン)は文句なしだろう。もちろんA代表のタイ戦に招集された野澤大志ブランドン(FC東京)も有力だが、これまでの大岩ジャパンでのパフォーマンスと森保ジャパンのワールドカップ(W杯)2次予選シリア戦で起用されたこと、さらには守備面だけでなく、ロングキックや高速スローなどでもチームを助けられる点も評価に値する。もっとも、野澤はもちろん藤田和輝(栃木SC ※2024年はアルビレックス新潟からジェフユナイテッド千葉に期限付き移籍)やベンフィカBで経験を積む小久保玲央ブライアンにもチャンスがある。
ディフェンスラインは半田陸(ガンバ大阪)、馬場晴也(北海道コンサドーレ札幌)、木村誠二(FC東京→サガン鳥栖)、バングーナガンデ佳史扶(FC東京)のセットに。右サイドバックは半田と内野貴史(デュッセルドルフ)で迷うが、やはり直近のアルゼンチン戦でのインパクトもあり半田を選択。ただ、ここは非常にハイレベルな競争が繰り広げられそうだ。
センターバックは木村、西尾龍矢(セレッソ大阪)、鈴木海音(ジュビロ磐田)の3人が常連だが、準優勝したアジア大会でキャプテンを務めた馬場は所属クラブで主力として出場機会を得ており、ビルドアップの起点としてもスペシャルなものがある。中盤もこなせるポリバレントだが、このチームは中盤が充実しているので、センターバックに配置している。
もう1人は空陸両面で強さを発揮できる木村という組み合わせにしたが、西尾や鈴木海もほぼ差がなく、来シーズンの成長と所属クラブでポジションを掴めるかが鍵になる。また山﨑大地(サンフレッチェ広島)もポテンシャルは高い。U-20W杯組のチェイス・アンリ(シュツットガルト)や高井幸大(川崎フロンターレ)、田中隼人(柏レイソル)の突き上げも期待される。センターバックは所属クラブでスタメンを掴んでいる選手が少なく、大岩剛監督も頭を悩ませているポジション。このままだとパリ五輪の本大会では確実にオーバーエイジ枠を使われるので、東京五輪世代がそうだったように、ここからの成長に期待したい。
人材豊富な左右サイドアタッカー、キーマン斉藤光毅のコンディションが気掛かり
中盤は攻守のバランスと国際基準でのクオリティーを考えて、藤田穣瑠チマ(シント=トロイデン)、鈴木唯人(ブレンビー)、福井太智(バイエルン・ミュンヘン)で構成した。フォーメーションでは4-3-3だが、4-2-3-1に可変しても福井をボランチ、鈴木唯をトップ下にできる。より攻守両面の高強度を求めるなら松木玖生(FC東京)、展開力なら大岩監督にキャプテンも任される山本理仁(シント=トロイデン)、攻守の機動力を出すなら川﨑颯太(京都サンガF.C.)、守備のボール奪取力を高めるなら田中聡(湘南ベルマーレ)と常連メンバーだけでも、起用のバリエーションが豊富だ。
もう1つ注意しないといけないのがセットプレーの高さだ。流れの局面でさほど問題がなくても、セットプレーは高さの有利、不利が出てしまうこともあり、サイドバックやサイドアタッカー、FWの選択によっては中盤のサイズを意識しないといけない。そうなると180センチで空中戦にも強い松木は有効になってくるし、センターバックとのポリバレントである馬場をボランチで起用するプランも浮上する。
ただ、全体的にハイレベルではあるが、現時点でA代表に強く推せるような選手が出てきていないのも事実。人材という意味では最も豊富なセクションでもあるので、ここまで未招集の山根陸(横浜F・マリノス)など、逆転が十分に起こり得る。今年は特別指定としてJリーグに参加していた重見柾斗(福岡大)や山内翔(筑波大)のような選手も半年間で主力に食い込んでもおかしくない。10番寄りではあるがロス五輪世代の早川隼平(浦和レッズ)にも期待したい。また、オランダで徐々に出番を増やしている佐野航大(NECナイメヘン)は中盤とサイドのポリバレントとして主力に食い込んでくる期待が高い。
左右のサイドアタッカーも人材が豊富で、非常に悩ましいところ。その中で左を佐藤恵允(ブレーメン)、右を山田風喜(京都→東京ヴェルディ)にしたのは大岩ジャパンの基本コンセプトである良い守備から良い攻撃という基準をハイレベルに満たしているから。攻撃面のキャラクターとして佐藤はストライカー的、山田はチャンスメイカー的というバランスも考えた。もちろん左は本来なら斉藤光毅(スパルタ・ロッテルダム)がこのチームのキーマンだが、なかなかフィットしないまま長期の怪我をしてしまったこともあり、現時点では割り引いている。
右サイドは三戸舜介(アルビレックス新潟→スパルタ・ロッテルダム)もいるが、今回はセットプレーの頭数ということも考えて山田をチョイスした。もし中盤に松木などを起用すれば、三戸を起用しやすくなる。このあたりは単純な個の比較だけでなく、全体のバランスも重要になってくる。そのほか、アルゼンチン戦でインパクトを残した俊足の松村優太(鹿島アントラーズ)、走ってよし、仕掛けてよしの近藤友喜(横浜FC)など、個性的なタレントが多い。やはりA代表で三笘薫(ブライトン)や伊東純也(スタッド・ランス)が活躍することで、下の世代に大きな刺激となっているのは間違いない。
パリ世代の久保を本大会で組み込むなら…
1トップは現時点で細谷真大(柏レイソル)が突出しており、ここは異論の余地がないのではないか。無論、U-23アジア杯などでは細谷を招集できるのかどうかという問題もある。小田裕太郎(ハーツ)や藤尾翔太(FC町田ゼルビア)、アルゼンチン戦でゴールを決めた福田師王(ボルシアMG)など選択肢には事欠かないが、細谷が1枚も2枚も抜けており、さらなる突き上げが欲しいところだ。
鹿島から期限付き移籍ながら、東京ヴェルディを悲願のJ1昇格に導いた染野唯月も、改めて有力候補になってくるのではないか。ロス五輪世代の後藤啓介(ジュビロ磐田→アンデルレヒト)や怪我から回復してきた大森真吾(北海道コンサドーレ札幌)あたりはポテンシャルを考えても、今後のパフォーマンス次第で、一気に細谷を脅かす存在になってもおかしくない。
このメンバーにあえて久保を入れるなら右のインサイドハーフか、あるいは4-2-3-1のほうがメインになるかもしれない。また本人も得意なポジションとして認める右サイドも中盤とのバランスによってはファーストチョイスになり得る。もちろん、現時点では完全に抜けた存在ではあるが、来年4月に無事、本大会の出場を決める頃にはチーム全体がベースアップするとともに、複数選手がA代表入りに名乗りをあげてきてくれるはず。そうなれば久保を本大会で招集できたとしても、良い意味でのプラスアルファにしていけるだろう。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。