7G圧勝の昌平、なぜゴールラッシュに? 「このままだと上位には…」危機感募らせた末の圧勝劇【高校選手権】

昌平が7ゴールで初戦突破【写真:徳原隆元】
昌平が7ゴールで初戦突破【写真:徳原隆元】

選手権1回戦で奈良育英(奈良)に7-0で圧勝

 第102回全国高校サッカー選手権第2日は12月29日、首都圏8会場で1回戦の残り15試合が行われ、2年連続6度目出場の昌平(埼玉)は出場3年連続16度目となる奈良育英(奈良)に7-0で圧勝し、12月31日の2回戦で米子北(鳥取)と対戦することになった。

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 昌平が東日本の強豪が集結するプレミアリーグで鍛え抜かれた貫禄を示した。エースFW小田晄平が前半5分に初シュートとなる決定打をお見舞いしたのが、ゴールラッシュの進軍ラッパになった。

 同6分にMF大谷湊斗が強烈な中距離弾を放って奈良育英の守備ラインを慌てさせれば、1分後には右コーナーキックから主将のDF佐怒賀大門のヘッドが相手ゴールを脅かした。

 こういう流れになると“そのうち取れるだろう”という安易な思いが頭をもたげがちだが、昌平の選手は“取れる”ではなく“取る”という強い意志で縦へ前へと進出した。

 守備陣も含め、ドリブルが達者でパスとの使い分けも巧妙な選手が勢揃いする才能の宝庫だ。

 同11分、早速相手ゴールをこじ開けた。左から持ち運んだ2年生FW鄭志鍚が中央でフリーになった小田に横パス。エースが右足で先制点を流し込んだ。同25分には小田のパスをMF土谷飛雅が決め、同36分にも背番号10のMF長準喜が左から強シュート。GKが弾いたこぼれ球を鄭が押し込み、前半で圧倒的優位に立った。

 後半に入ってもほとんどの時間帯で攻勢を仕掛けた昌平は、同21分に鄭が2点目を決めると、ドルブル自慢のMF西嶋大翔は交代出場して2分後の同26分にパンチの利いた一撃でネット揺らした。

 さらに後半33分、後半開始から登場したMF長璃喜が左サイドから切れ込み左足を振り抜いて6点目。試合終了間際には同じく途中出場のFW工藤聖太郎が右クロスから蹴り込んで大勝劇を締め括った。

7ゴールは昌平高校の選手権史上で最多記録

 7ゴールは第97回大会3回戦で創成館(長崎)から挙げた3点を大幅に更新する、昌平の選手権での最多記録となった。

 コーチの肩書が今大会から変わった村松明人監督は、7得点についてこんなふうに解説する。

「埼玉県予選が終わったあと、このままだと上位には進めないと感じ、FWを厚くしようと思った。この3週間、2トップにして複数の選手を試してきました」

 過去5度の全国選手権では、藤島崇之前監督の補佐役としてベンチ入りしたが、指揮官としての選手権は初。この大勝なら不安もなかったのでは?と水を向けると、「今までより選手の力を理解できていたので、(采配面で)ガチガチになることはありませんでした」と述べた。

 しかし10日前、全国選手権に向けて唯一行った京都橘(京都)とのテストマッチは新たな戦術、システムが機能するかどうかの最終試験とあり、「これが駄目ならと考えると、こっちのほうがドキドキしましたよ」と笑わせた。この試合は小田と工藤が得点し2-0で勝利している。

 2回戦の相手はプレミアリーグ西地区に所属する米子北だ。公式戦では9年ぶり2度目の顔合わせだが、初対戦したのが第93回全国選手権1回戦で、昌平が初出場した大会だ。この時はPKを取られて0-1で敗れたが、あの時のチームが小結なら、今は横綱に昇進した別格のチームでもある。興趣に富んだ好試合が期待できそうだ。

(河野 正 / Tadashi Kawano)



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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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