なでしこジャパン初招集、“10代の大器コンビ”は何者か? 18歳谷川、17歳古賀が放つ特大級のインパクト【コラム】

ブラジルとの2連戦に招集された谷川萌々子(左)と古賀塔子【写真:Getty Images】
ブラジルとの2連戦に招集された谷川萌々子(左)と古賀塔子【写真:Getty Images】

ブラジルとの親善試合に18歳MF谷川萌々子と17歳DF古賀塔子が初招集

 なでしこジャパン(日本女子代表)の池田太監督はアウェーで行われる親善試合のブラジルとの2連戦(11月30日、12月3日)に向け、22人のメンバーを発表。JFAアカデミー福島の18歳MF谷川萌々子と17歳DF古賀塔子が初招集された。初招集と言っても、今夏の女子ワールドカップ(W杯)ではトレーニングパートナーとしてなでしこジャパンに帯同しており、池田監督も直接指導。彼女たちもチームのコンセプトは共有している。

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 さらに2人に関しては今年9月から10月にかけて、中国の杭州で行われたアジア競技大会において、主力メンバーとして金メダル獲得に貢献しており、すでに彼女たちの存在を認識しているファンも少なくないかもしれない。173センチの古賀について池田監督は「ディフェンスの真ん中もサイドもできる。彼女の持っているフィジカルのストロングをアジア競技大会でも見せてくれた」と語る。

 アジア競技大会では7試合すべてに出場し、力強い1対1で相手の攻撃を跳ね返しながら、守備範囲の広さを生かして、周囲をカバーしてゴール前で粘り強いクリアを見せるなど、まさしく“なでしこの冨安”と言った声も多く聞かれるほど。JFAの公式プロフィールにおける好きな言葉は元日本代表MF遠藤保仁の「明日やろうはバカヤロー」。前向きでアグレッシブな性格は年上の選手たちに混じっても全く物怖じしない面にも表れているだろう。

 現在なでしこジャパンは4バックにトライしており、センターバックはDF南萌華(ASローマ)とDF三宅史織(INAC神戸レオネッサ)のコンビをベースに、女子W杯のメンバーだった20歳のDF石川璃音(三菱重工浦和レッズレディース)も主力を狙うが、そこに古賀がどう割って入れるか。ただし、池田監督も言うように古賀はサイドバックもこなせるため、ブラジルとの2試合でもポリバレントな起用法になるかもしれない。

 一方、谷川のポジションはボランチだが、非常にスケールが大きいプレーが持ち味。池田監督は「彼女の持っている展開力や攻守にわたる強さ、うまさを見せてくれる特長がチームのプラスになる」と評価する。相手のプレッシャーをモノともしない組み立てをベースとするが、中盤でボールを奪って前を向けば、恐れることなく攻め上がり、正確なミドルシュートに持ち込む。

 アジア大会の決勝での活躍ぶりは記憶に新しい。北朝鮮に4-1と勝利したなか、開始10分にFW中嶋淑乃(サンフレッチェ広島レジーナ)のゴールでリードを奪った日本に対して、北朝鮮も迫力ある攻撃で反撃し、前半のうちに追い付かれてしまった。しかし、その中でも谷川は中盤で怯まずバトルを挑み、自身の見事なスーパーゴールを含む、後半のゴールラッシュに結び付けた。

 欧州の女子チャンピオンズリーグなどで活躍し、バロンドールを獲得することが大きな目標という谷川にとって、2011年の女子W杯で世界一に輝き、同年のバロンドールを日本人で初めて獲得した澤穂希も憧れの存在だ。また昨年のバロンドーラーであるスペイン代表のMFアレクシア・プレジャスのプレーなども参考にしている。

谷川や古賀といった新しいパワーがどれだけのエネルギーをもたらすか

 現在のなでしこジャパンでは司令塔的な役割を担うMF長谷川唯(マンチェスター・シティ)や10番を背負うMF長野風花(リバプール)に挑む構図となるが、ハードワークが求められる中盤では長谷川や長野、MF林穂之香(ウェストハム・ユナイテッド)など、誰と組んでもシームレスな関係を築きながら、ゴールに直結するプレーなど、スペシャリティーを発揮していくことが、代表定着のキーになってきそうだ。

 女子W杯は5-4-1(ポゼッション時は3-4-2-1)をベースに、堅守速攻に磨きをかけて世界に驚きを与えたなでしこジャパンだが、池田監督は自分たちから主導権を握るスタイルに転換するべく、DF熊谷紗希(ASローマ)を3バックのリベロから中盤のアンカーに上げた4-3-3にトライしている。ブラジルは今年2月にアメリカで行われたシービリーブス・カップで0-1と敗れた相手だ。

「前回戦った時は我々が3枚のディフェンスを構築する途中で、そういった部分で色んなトライができた試合でした。今回で言うと、W杯を経て、システム的には4枚のディフェンスでやっているなかで、これまでは対戦相手の力関係で押し込む展開が多かった。それがブラジル相手に4枚で行くか3枚で行くかは置いたとしても、アウェーで相手の圧力がかかっているなかで、自分たちの積み上げているものができるかは楽しみ」

 ブラジルとの2試合をそう展望する池田監督にとっても、谷川や古賀といった新しいパワーがなでしこジャパンにどれだけのエネルギーやインパクトをもたらすかが、パリ五輪をかけた北朝鮮とのホーム&アウェーに向けても、さらに先の世界一を目指す戦いでも大きなものになるはず。また“アジア大会組”からは谷川、古賀のほかに前回の女子五輪2次予選から引き続き、“WEリーグの三笘”の異名を持つMF中嶋が招集されたがヤングタレントたちの奮起にも期待していきたい。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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