J2昇格PO圏“ラスト1枠”争いが大混戦 甲府、山形、長崎…史上稀に見る逆転劇の可能性も…三つ巴の戦いを展望【コラム】

J2のプレーオフ圏争いが白熱【写真:Getty Images】
J2のプレーオフ圏争いが白熱【写真:Getty Images】

J2リーグ最終節を迎え、プレーオフ(PO)圏入り争いは熾烈

 今シーズンのJ2もいよいよ最終節。すでにFC町田ゼルビアが優勝とJ1昇格を決めて、自動昇格の残り1枠を2位の清水エスパルス、3位のジュビロ磐田、4位の東京ヴェルディで争う“三つ巴”の様相だが、見方を変えれば、そのうち2つがプレーオフに回ることになる。5位のジェフユナイテッド千葉はプレーオフが確定している。あとは5位と6位のどちらで終えるかで、プレーオフの対戦カードが変わる。問題は6位を巡る争いだ。

■第41節終了時の順位

1位:町田 84(勝ち点)+42(得失点差)/優勝&昇格
2位:清水 73(勝ち点)+44(得失点差)/自動昇格orプレーオフ進出
3位:磐田 72(勝ち点)+29(得失点差)/自動昇格orプレーオフ進出
4位:東京V 72(勝ち点)+24(得失点差)/自動昇格orプレーオフ進出
5位:千葉 67(勝ち点)+10(得失点差)/プレーオフ進出
6位:甲府 64(勝ち点)+11(得失点差)/プレーオフor圏外
7位:山形 64(勝ち点)+9(得失点差)/プレーオフor圏外
8位:長崎 62(勝ち点)+12(得失点差)/プレーオフor圏外

 可能性があるのは6位のヴァンフォーレ甲府、7位のモンテディオ山形、8位のV・ファーレン長崎の3つだが、これに関係して、シーズンの試合日程を自動作成するシステム、通称「日程くん」の仕事が大きな注目を集めている。

 この3チームが絡む最終節の対戦カードは山形対甲府、千葉対長崎。これだけでも運命的だが、さらなるギミックが絡んでいる。現在、6位の甲府と7位の山形は勝ち点64で並んでおり、得失点差で甲府がわずかに上回っているという状況だ。甲府と山形の関係だけ見ると、引き分けなら順位は逆転しないが、勝ち点62で8位の長崎が千葉に勝利した場合、勝ち点が65になり、得失点差で6位に滑り込む。

 分かりやすく説明すると、現在の得失点差は甲府が+11、山形が+9、長崎が+12であるため、甲府と山形が引き分けて、長崎が千葉に勝利した場合は勝ち点が3つ並び、その結果として得失点差が+13以上になる長崎が、甲府と山形を上回ることになるのだ。なお現在5位の千葉が長崎に敗れて、甲府か山形が勝利した場合は千葉が6位になる。

 プレーオフの方式は3位と6位、4位と5位で1回戦、それぞれの勝者が2回戦で昇格を争うが、一発勝負であるためシーズンの順位が上のほうにホームの開催権があり、なおかつ90分で同点の場合はホーム側が勝ち上がるという仕組みであるため、順位が上であるほど有利な立場で戦うことができる。それを踏まえて、千葉が5位か6位かで何が変わってくるかというと、対戦相手もそうだが、仮に5位の千葉が4位のチームを破り、他会場で6位のチームが3位のチームを破った場合は2回戦で、千葉にホーム開催の権利が回ってくるのだ。

 すでにプレーオフを確定させている千葉にとっても、長崎戦は負けられない試合となる。もちろんホーム最終節ということもあり、勝ち点3獲得を目指すはずだが、同点で終盤を迎えることになれば、勝ち点1でクローズさせるゲームコントロールも大事になってくるかもしれない。

 逆にどうしても勝利が欲しい長崎はエジガル・ジュニオが復帰してきており、ファビオ カリーレ監督は時間帯や試合展開を見ながら、現在25得点のフアンマ・デルガドとの“Wエース”が前線に並び立つ布陣を打ち出してくる可能性も考えられる。小林慶行監督が率いる千葉は13得点の小森飛絢など勢いのあるアタッカーの活躍に期待は懸かるが、ディフェンスリーダーの鈴木大輔や司令塔の田口泰士など、経験豊富な選手の存在が重大になりそうだ。

山形対甲府はともに勝ち点3を狙い合う激戦が予想

 甲府と山形の試合は勝ち点3を狙い合う激しい試合になることは間違いないが、結果として引き分けになり、長崎に逆転でプレーオフの権利をさらわれるというケースも十分にあり得る。実際、女子のパリ五輪予選で、同組の韓国と中国が引き分けた結果、なでしこジャパンと同じ組の2位だったウズベキスタンが4か国による最終予選の4枚目の切符を獲得するというケースが発生したばかりだ。

 甲府はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を戦いながらリーグ戦でも直近5試合を3勝2分と好調を維持している。タイトな守備をベースに、縦に素早くボールを運びながら、サイドバックの高い位置で絡む、迫力のある攻撃が持ち味。12得点のピーター・ウタカはACLの浙江FCでスタメン起用に応えて、勝利につながる見事なゴールを決めた。山形戦は勝負どころで投入される可能性が高い。

 一方、渡邉晋監督の率いる山形は4連勝中で、終盤戦に来てチームの結束力を感じさせる。現在7位ながらホームで勝てばプレーオフ行きが確定し、引き分け以下なら逃すという最もシンプルな構図なので、とにかく勝利を目指す機運は高いだろう。山形もチアゴ・アウベスなど“ベンチパワー”が強く、もし同点で終盤に差し掛かれば、両チームが攻撃的なカードを斬り合う展開になりそうだ。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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