ACL日韓戦で「またこの展開かと」 蔚山戦で手こずる川崎が選択した「それしかない」打開策【コラム】
【カメラマンの目】攻める川崎、守る蔚山の構図がはっきり表れたACLの一戦
川崎フロンターレ対蔚山現代の一戦は試合終盤までスコアが動かず、またこの展開かという思いが脳裏をよぎる。これまでAFCチャンピオンズリーグ(ACL)における日韓戦で、日本のチームが揮(ふる)わなかった時のパターンがピッチで展開されていた。
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その展開は日本のクラブが攻めながらも韓国チームの堅固な守備を崩せず、逆にカウンター攻撃を受けてピンチを招き、最悪は失点して散るという流れだ。
川崎は試合開始からアグレッシブに戦った。キックオフからすぐ隣国への強いライバル心がぶつかり合いマルシーニョと蔚山DFキム・テファンが小競り合いを演じる。カメラのファインダーで捉えた激しく感情を露わにしたマルシーニョは、自分とポジション的にぶつかる、同じ背番号23番の相手選手に、そのジェスチャーから挑戦状を叩き付けたようだった。ただ、試合開始直後からヒートアップした感情は、後半24分にマルシーニョがピッチを去る時には冷静となり、両選手が握手を交わしている。
しかし、ピッチに立っていればそこは勝負。両選手ともお互いに負けられない思いから、激しいつばぜり合いを演じていった。実際にマルシーニョのプレーからは何としても自分が主戦場としている左サイドから蔚山守備網に風穴を開けてやるという強い意志が感じられ、果敢にドリブル突破を試みていた。
川崎はこのブラジル人ドリブラーに加え、中央のレアンドロ・ダミアンと右サイドの瀬川祐輔とともに攻撃だけでなく、ボールを持った蔚山の選手に対して前線から厳しいプレスをかけ、攻守に渡って敵ゴール前で躍動した。
だが、蔚山の牙城はやわにはできていなかった。マルシーニョは対面する相手の守備選手に一泡吹かせてやろうと感情的になっていたため、得意としている高速ドリブルでの突破も強引になり、効果的な威力を発揮できない。マルシーニョに限らず、川崎はチーム全体で攻めながらも蔚山のタイトな守備に手こずりゴールへと到達できずに前半を終えた。
後半に入ると、川崎は失点こそ許さなかったものの、蔚山の堅い守備に阻まれて続け徐々にペースダウンしていく。
逆に蔚山は守備からリズムを作り、後半に勝負という思いがあったのか、後半9分に見るからに屈強なFWを投入。1点を狙いにいくスタイルで攻撃のギアを上げた。蔚山の手堅い試合運びは大勝することは少ないだろうが大敗もない、しぶとさが感じられた。
そして時間は経過し、スコアは0-0のまま動かない。このまま引き分けに終わってしまったら、川崎にとっては不完全燃焼の感が強く、蔚山にすれば試合巧者ぶりを発揮した、価値ある勝ち点1奪取となるところだった。
手詰まりの状態が続いた川崎が勝負の決着を付ける
川崎はペナルティーエリア内に進出しても、蔚山の守備は厚く最終局面を崩せない。本来ならボールをつないで相手に揺さ振りをかけて守備網が崩れたところに決定的なパスを供給するところだが、蔚山の陣形はなかなか破綻しなかった。そのためゴール前にラストパスを供給しても、相手の体勢が崩れていないためボールはクリアされ得点は遠い。
そんな手詰まりの状態が続き、引き分けが濃厚と思われた後半44分に、橘田健人がペナルティーエリア外からの強烈なミドルシュートでネットを揺らす。
試合展開から言って川崎がゴールを決める方法は、まさにそれしかなかったというミドルシュートで決着を付けたのだった。川崎はこれまでのACLでは好成績を挙げることができず、今回こそはという思いが強いように見えた。これでグループリーグ2連勝と幸先の良いスタートを切った。結果を出せなかった過去の大会と同じ轍は踏まない。苦しみながらも手にした勝利から、そうした強い信念が感じられた試合だった。
徳原隆元
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。