プレミア所属の日本人・序盤戦査定 三笘&冨安が実力発揮…加入初年度の遠藤は飛躍にもう一歩か【コラム】

プレミアリーグでプレーする日本人選手3人の序盤戦を査定【写真:Getty Images】
プレミアリーグでプレーする日本人選手3人の序盤戦を査定【写真:Getty Images】

遠藤、三笘、冨安…日本の実力者が揃うプレミアリーグ序盤戦の出来を独自評価

 現在のサッカー界で実力者が有数集まる熾烈なイングランド1部プレミアリーグも、開幕から6節を消化した。今夏、リバプールに日本代表のキャプテン遠藤航が加入するなど、日本人にとってもホットなリーグとなっている。「FOOTBALL ZONE」では欧州でプレーする侍たちに焦点を当て、「欧州日本人・序盤戦通信簿」と題し特集を展開。それぞれ「飛躍の条件」をベースに独自評価していく。(文=河治良幸)

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【評価指標】
S=抜群の出来
A=上出来
B=まずまずの出来
C=可もなく不可もなく
D=期待外れ

 遠藤がリバプール移籍を果たし、日本人選手もようやく“プレミア勢”と呼べる人数になってきている。しかも日本代表で主力を張る選手ばかりで、少数精鋭と呼ぶにふさわしい。しかもアタッカー、セントラルMF、ディフェンダーであり、彼らの戦いが後に続く日本人選手に道を開いていくことになりそうだ。

■三笘薫(ブライトン)
評価:S
飛躍の条件:過密日程を乗り切る

 三笘薫に関しては6試合で3試合3アシストと注文の付け所が難しいほど、好パフォーマンスが目立っている。8月26日の第3節ウェストハム戦は三笘がやや沈黙したことで、ホームで1-3と押し切られてしまったが、代表ウィーク明けだった第5節のマンチェスター・ユナイテッド戦はゴールやアシストこと無かったものの、2点目の起点になるパスなど、ディオゴ・ダロトなどの厳しいマークのなかでも左サイドで存在感を出しながら周りの選手の特長も引き出すなど、攻撃のキーマンになっている。

 そして9月24日のボーンマス戦は今シーズン初めて途中からの出場となったが、シュート2本で2得点を決めて、3-1の勝利に大きく貢献した。ただ、リーグ戦に加えてUEFAヨーロッパリーグ(EL)、国内カップ戦と過密日程が続く状況になっており、チェルシーに1-0で破れたカラバオカップ3回戦では後半20分に交代で下がっており、少し疲労が出てきているかもしれない。ただ、それはロベルト・デ・ゼルビ監督も認めるように、チーム全体に言えることだ。

 ブライトンは戦術的な共有がチームのパフォーマンスを左右すると言えるなかで、いかに2チーム分の選手層を機能させていくか。それが三笘の起用法にも直結してくる。指揮官の信頼は間違いないだけに、FWとマルチのダニー・ウェルベックだけでなく、バルセロナから加入したアンス・ファティがフィットしてくることは三笘にとってもポジティブな材料になりうる。

CBとしても起用され、今後の飛躍に期待

■冨安健洋(アーセナル)
評価:B
飛躍の条件:対人でのインパクト

 昨シーズン怪我に悩まされた冨安健洋にとっては勝負のシーズンになることは間違いない。ここまでリーグ戦は第2節のクリスタル・パレス戦で、左のフルバック(サイドバック/SB)で起用されたのが唯一のスタメンだが、その試合で2枚のイエローをもらい退場となった。ただし、1枚目はスローインの遅延、2枚目はカードが出るほどか疑わしいジャッジで、地元メディからも同情の声が出たほど。

 出場停止明けのマンチェスター・ユナイテッド戦、さらに代表ウィーク明けのエバートン戦は終盤の出場にとどまったが、ミッドウィークに行われたカラバオカップ3回戦ではブレントフォードを相手に、ついにセンターバック(CB)で出場。後半途中から右のフルバックを務めるなど器用さを見せ、見事クリーンシートで、1-0での4回戦進出の立役者となった。

 現在アーセナルはアルテタ監督がフルバック、CBともに複数の組み合わせを試しながら、同時にUEFAチャンピオンズリーグ(CL)などとの過密日程にも向き合っている。冨安もガブリエウ・マガリャンイスやベン・ホワイトとともに、複数のポジションを状況に応じてこなすことになりそうだが、与えられたチャンスに安定したパフォーマンスで応え続ければ、バックラインでの位置付けも変わってきそうだ。

 日本代表でもドイツ戦、トルコ戦で改めて“森保ジャパン”になくてはならない存在であることを印象付け、冨安も自信をクラブに持ち帰った。彼の重要性は森保一監督も認めているが、国内の親善試合などには無理に召集せず、アーセナルで地位を確立することにフォーカスしてもらいたい。その方が結局は日本代表にもプラスになるというのが記者の見解だ。

“デュエル王”としての真価は未だ示せていないが、カップ戦できっかけを掴んだか

■遠藤航(リバプール)
評価:B
飛躍の条件:デュエル勝率を上げる

 遠藤航はブンデスリーガの“デュエル王”としての真価をリバプールで発揮しているとは言い難い。もちろんブンデスリーガに比べても、オンオフのスピードなど、プレミアがよりタフな環境であることは確かだが、リバプールの守り方、攻撃バランスというのもシュツットガルトとは大きく違う。しかも昨シーズンはインサイドハーフで“ボックス・トゥ・ボックス”の動きをしていたので、アンカーというポジションを再び自分のものにしていく時間も必要だろう。

 ここまでリーグ戦はスタメン1試合、途中出場が3試合となっている遠藤は9月21日に行われたELのLASKリンツ戦でスタメン起用されたが、中盤でボールを奪われて大きなピンチを招くなど、あまり良いところを見せられずアルゼンチン代表MFアレクシス・マクアリスターと途中交代。その後チームは逆転で3-1としたが、地元メディアの評価も辛かった。

 直後のウェストハム戦は終盤の出場だったが、ミッドウィークのカラバオカップ3回戦で、ユルゲン・クロップ監督は遠藤を再びスタメン起用。遠藤はチャンピオンシップ(イングランド2部に相当)のレスター・シティ相手に対して、獅子奮迅の働きでフル出場。3-1の勝利を支えた。自身の公式X(旧ツイッター)にて遠藤は「I’m happy to play as my first starting 11 in Anfield!! I will keep trying.」と綴っており、前向きなゲームになったことが伝わる。

 遠藤の良さというのはフィジカル的な強さだけでなく、攻守での予測力、周囲を観察しながら効果的なプレーを繰り出していけるところだ。それらを発揮するには強いあのテンポにもっと慣れていく必要はあるが、データが重視されるリーグであり、ブンデスと同じくデュエル勝率やデュエル勝利数など、目に見える結果で大きく評価は変わってくる。クロップ監督が求める戦術面のタスクに向き合いながらにはなるが、プレミアリーグ、しかもいきなりリバプールという名門で挑戦していくなかで、フィットとスペシャリティの両面で上向きになっていくことを期待したい。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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