田中碧が向き合うのは自分自身「まだまだやらないと」 移籍実現せず、課題も山積み…主将マークに込められた信頼【現地発】

トルコ戦でキャプテンマークを巻いた田中碧【写真:Getty Images】
トルコ戦でキャプテンマークを巻いた田中碧【写真:Getty Images】

ドイツ戦でゴール、トルコ戦ではスタメン出場し主将マークを巻いた

 ドイツ戦から大幅にメンバーを入れ替えて臨んだトルコ戦。遠藤航や板倉滉といった主将経験者がピッチに立たなかったなか、キャプテンマークを巻いたのは、6か月ぶりの招集となった田中碧だった。

 カタール・ワールドカップ(W杯)のスペイン戦、「三笘の1mm」と言われた名場面でゴールを奪った田中は、W杯で確かな結果を残すことに成功した。大会前はもともと守田英正がボランチのスタメン最有力と考えられていたが、直前の負傷によりフルコンディションで戦えず。変わって出場機会を得た田中がチャンスを掴んだ形だった。

 だが、大会後はW杯フィーバーとは裏腹に苦しい戦いが続いた。ドイツ2部のデュッセルドルフで大きな存在感を示すことができず、シーズン終幕を前にした4月には右膝内側靱帯断裂の重傷で戦線を離脱。日本代表の6月シリーズもメンバー外となり、今夏の移籍市場で目指していた移籍も成立させることができなかった。

 それでも、今回の9月シリーズは代表メンバー入り。「ここにきた時に何ができるかが大事だと思う。自分が何ができるかを証明できれば、僕自身の価値も上がる。自分自身に目を向けて、自分自身にフォーカスしてやっていきたい」と闘志を燃やしていた。

 カタールW杯以来の再戦となったドイツ戦ではベンチスタートとなったが、後半途中から出場するとダメ押しとなる4点目をヘディングで奪取。翌日に控える誕生日を前にバースデーイブゴールを奪う活躍を見せ、短い時間ながら印象的なパフォーマンスを残した。

 そして、迎えたトルコ戦。この試合ではキャプテンマークを巻いて先発出場を果たすことになる。川崎フロンターレ時代には途中からキャプテンマークを巻くことはあったが、先発で、なおかつ代表でキャプテンマークを巻くのは初。谷口彰悟や堂安律といった主将になり得る選手たちがメンバーに入っていたなかで任命されたのは、森保一監督の信頼の証でもあった。

「自分のことを考える暇もなく勝てばいいなと思っていた。試合前のスピーチもそうですし、シンプルにキャプテンをやるというのは責任をすごく感じました」

 ただ、90分を通したパフォーマンスに焦点を絞れば、決して満足のいく出来ではなかった。初めてコンビを組んだ伊藤敦樹を見ながらうまくバランスを取って調整。後方と前線をつなぐリンクマンとしては機能していた。

 それでも、守備の部分では主力の遠藤や守田のような力強いプレーを見せることができず。度々バイタルエリアにスペースが生まれてしまい、そこを起点に攻め込まれたことは改善点として残る。本人も「より自分自身のプレーのクオリティーを上げていかないといけない。まだまだやらないといけないなと思います」と反省を口にしたが、今後さらにプレーを改良していくことは必須で、むしろそうしなければ代表から遠ざかる可能性も否定できない。

 移籍がうまくいかず、なかなかパフォーマンスも上がらずと大きな壁にぶつかっている田中。指揮官からの信頼に応えるためにも、今遠征で語っていたように自分自身に目を向け、自らの力で価値を証明していくことでより存在感を出していきたい。

(林 遼平 / Ryohei Hayashi)



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林 遼平

はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。

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