伊東純也は別格「いつ見てもいい」 トルコ困惑の追い付けない70m級スーパードリブル…代表OBが絶賛「世界最高峰」【解説】

日本代表の伊東純也【写真:Getty Images】
日本代表の伊東純也【写真:Getty Images】

【専門家の目|金田喜稔】トルコ戦の後半に生まれた衝撃プレー「伊東にしかできない」

 森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング20位)は、9月12日にベルギー・ゲンクでトルコ代表(同41位)と対戦し、4-2で快勝した。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏がMF伊東純也のプレーを分析し、「凄いのはパフォーマンスの平均値が高い点で、最近の日本代表で『いつ見てもいい』というのは伊東ぐらいだ」と評している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 トルコ戦の後半、1点差に詰め寄られた日本に暗雲が立ちこめたなか、スピードスターが雰囲気を一変させた。金田氏も衝撃を覚えたという。

「トルコに2点目を決められて3-2と1点差に詰め寄られた時、スタジアムには同点、そして逆転ムードも漂っていた。嫌な空気を振り払ったのが伊東純也だった。1プレーで雰囲気をがらっと変えた。何メートル走ったんだよっというぐらいのスーパードリブルで持ち込み、相手に倒されてPKを獲得し、自ら決めてダメ押しゴールを奪った」

 後半30分、トルコのコーナーキックから自陣ペナルティーエリア手前でボールを拾った伊東は、相手MFイスマイル・ユクセクより後方から一気にスピードアップする。そのままドリブルでトップスピードに乗ると、併走するユクセクを引き離して相手のペナルティーエリア内まで侵入。たまらずユクセクが手をかけて伊東を倒し、獲得したPKを伊東が自ら沈めてダメ押しの4ゴール目で勝負は決した。

 本人は「何回か止まろうと思ったけど、意外と行けちゃったのでそのまま」とあっけらかんとした様子だが、金田氏は「同じプレーをできる人は、世界を見渡してもそう多くはない。世界最高峰のプレーと言ってもいいだろう」と最大級の賛辞を送る。

「伊東はシュートのイメージを持ちつつ、背後から迫る相手の気配も察知し、最後は多少スピードダウンしてPK奪取も視野に入れたボールの持ち方をしていた。ドリブルであれだけの距離を走り、余裕を持ちながら相手ペナルティーエリア内に侵入し、1人で局面を打開する。まさに伊東にしかできないプレーであり、凄いの一言だ」

唯一無二の存在となった伊東のたゆまぬ努力「成長の秘訣を直接聞きたいぐらいだ」

 伊東の主戦場は右サイドで、久保建英や堂安律らと激しいスタメン争いを繰り広げている。「日本の2列目には三笘薫、鎌田大地、久保建英、堂安律らタレントがひしめき、それぞれ異なる個性とスタイルを持っている。なかでも今の伊東は別格のように思う」と、金田氏は太鼓判を押す。

「ドリブル突破や局面打開を図り、1人でカウンターを完結する力もある。正確なクロスからチャンスメイクもするし、近年はゴールへの意識も高まり、状況に応じてゴールを意識したポジションも取っている。一時は『戦術・伊東』と言われたほどだ。スピードは言わずもがなだが、献身性や運動量も代表トップクラス。さらに凄いのはパフォーマンスの平均値が高い点で、最近の日本代表で『いつ見てもいい』というのは伊東ぐらいだ」

 現在30歳の伊東は現在もプレーの幅を広げており、トルコ戦後には「昔は自由にやらせてもらう側だった。若いサイドバックが何人も来て、上手く使ってあげるのも必要だと思うし、自分で行くところと使ってあげるところを使い分けられたら」と試行錯誤を続けている。そんな伊東のたゆまぬ努力に金田氏も感銘を受けているという。

「横浜F・マリノスのジュニアユースの入団テストで不合格となり、横須賀シーガルズでプレー。その後は神奈川大からヴァンフォーレ甲府に加入し、柏レイソル、ヘンク、スタッド・ランスと駆け上がってきた。年々、自身の強みを伸ばし、弱みを改善しながらプレーの幅を広げ、今では唯一無二の存在となった。成長の秘訣を直接聞きたいぐらいだ」

 10月シリーズでは13日にカナダ代表(デンカビッグスワンスタジアム)、17日にチュニジア代表(ノエビアスタジアム神戸)と対戦するなか、再び躍動するスピードスターの姿が見られるだろうか。

金田喜稔

かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。

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