なでしこジャパンの勢いは本物か 松葉づえ姿からV字回復の遠藤純、V候補撃破の一振りに期待【コラム】

遠藤純のコンディションは右肩上がりだ【写真:早草紀子】
遠藤純のコンディションは右肩上がりだ【写真:早草紀子】

左膝内側側副靭帯の負傷から懸命に調整、女子W杯初戦ザンビア戦のゴールで感情爆発

 遠藤純(エンジェル・シティ)、これほど感情が爆発した彼女を見るのは初めてのことだ。ザンビア代表(5-0)との女子ワールドカップ(W杯)初戦で見せた強烈な左足でのゴール後、両手を広げ、その歓喜を噛みしめていた。

 W杯最終メンバー発表を前にした5月末、遠藤は松葉づえをついていた。左膝内側側副靭帯を負傷したのだ。そこからW杯本大会に合わせて懸命の調整が始まった。無事、最終メンバー入りを果たし、直前合宿には最後に合流した。

 徐々にコンディションは上がっていき、今もなお、彼女の左膝周りはしっかりとテーピングが施されているものの、100%のパワーで臨める状態にまで整い切った。もちろん、左足の威力に陰りは一切見えない。フリー練習では最後まで残り、何度もシュートを蹴り込む。調子はさらに上がり続けているようだ。

 決勝トーナメント進出を決めてはいても、ここまで格下相手(第2戦はコスタリカ代表に2-0)での2勝。第3戦のスペイン戦がなでしこジャパンにとって今大会最初の強豪、ということになる。

 互いに無失点で上がってきたグループCの頂上決戦で勝利すれば文句なしの首位突破。決勝トーナメントで優位なポジションを得ることができる。自信を持って決勝トーナメントに進むためにも絶対に勝っておきたい相手である。

「スペインはチームの組み立ても上手ですけど個の強さもあってテクニシャンの人が集まってるチーム。また(前の)2試合とは違う難しさがあって、押し込まれる試合になるかもしれないですけど、自分たちのサッカーというのは変えずに戦いたいと思います」(遠藤)

アメリカのエンジェル・シティでプレー【写真:早草紀子】
アメリカのエンジェル・シティでプレー【写真:早草紀子】

 日本と同じくポゼッションサッカーを得意とするスペインはヨーロッパでも実力、人気ともに急上昇中だ。怪我から復帰した絶対的エース、アレクシア・プテジャスは2年連続バロンドールを獲得したスター選手。このプテジャスをはじめ、タレント揃いのスペインをどう攻略するかがポイントだが、遠藤のスピードは攻守が切り替わった日本のチャンスにこそ、生かされるべき。たとえ日本が劣勢になったとしても、それは同時に相手の裏のスペースも手薄になるということ。遠藤はそこを虎視眈々と狙っている。

「ザンビア戦では前でボールを取れるようにポジショニングを確認したので、その点を踏まえてスペイン戦に臨めればいい形で(ボールを)奪って攻撃につなげられる」(遠藤)と自信を覗かせる。

 雰囲気は最高に上がってきている池田ジャパン。ヨーロッパの頂点を狙えるスペインを跳ね返してこそ、この好調さが本物だと証明できる。そのきっかけとなる一弾が遠藤の左足から放たれることを期待する。

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早草紀子

はやくさ・のりこ/兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。在学中のJリーグ元年からサポーターズマガジンでサッカーを撮り始め、1994年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿。96年から日本女子サッカーリーグのオフィシャルフォトグラファーとなり、女子サッカー報道の先駆者として執筆など幅広く活動する。2005年からは大宮アルディージャのオフィシャルフォトグラファーも務めている。日本スポーツプレス協会会員、国際スポーツプレス協会会員。

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