「特別な思いがある」 町田ブラジル人FWエリキ、3年ぶりのJリーグ復帰で再確認した“日本愛”

町田でプレーするエリキ【写真:(C) FCMZ】
町田でプレーするエリキ【写真:(C) FCMZ】

【インタビュー】エリキは規律を重んじ、ルールに則って暮らす日本をリスペクト

 2023年1月1日、ブラジル人FWエリキは中国1部・長春亜泰からJ2のFC町田ゼルビアへ完全移籍することが発表された。3年ぶりに日本に戻り、自身にとってキャリア初となる2部リーグでの戦いの中で、格の違いを見せている。J2リーグ第25節を終えて得点ランクトップタイに立つ14ゴールを記録。アシスト数でもリーグ3位タイの6個と、ここまで合計20得点に絡んで、首位を快走するチームを牽引してきた。

 横浜F・マリノスで1年半プレーしていたエリキにとって、この日本という国はどんな国なのか。

「日本に戻れたことには、自分にとっても特別で、自分の家族にも特別な思いがありますし、本当に幸せです。エリキファミリーは、日本で暮らせて幸せです。日本をリスペクトしていますし、サッカーの面でも、これまでジーコさんやラモス瑠偉さんのように、多くのブラジル出身の選手が日本サッカー界で成功して、貢献してきました。そんな国に戻れてファンタスティックな、特別な思いを感じています」

 日本の印象について「すごく規律を重んじる国ですし、ルールに則って暮らしていることもリスペクトに値します。日本の生活に馴染むことは、全く苦ではありませんでした」と話すエリキは、特に気に入っている食事について「お寿司です。愛しています」と、笑顔を見せる。

 さらに「妻も、娘のラウラも、日本食が大好きなんです。3人が好きなのは、トンカツです。食事は全く困っていませんし、日本での生活は充実しています。日本の暮らしは私にとっても、家族にとってもパーフェクト。日本の人々、食文化を、私も家族も愛しています。渋谷、新宿、横浜、どこに行っても、美味しい食べ物がありますし、ファンタスティックですよ」と、続けた。

 特に娘のラウラちゃんは、どんどん日本の文化を吸収しているという。

「実は、私の娘は日本で生まれたんです。日本で育っている時間も長く、日本人のような一面もあって、家でも日本語の単語を話したりします。家族でレストランに行っても、水を注文する時にポルトガル語で『アーグア(水)』と言ったり、日本語で『水!』と言ったり、ポルトガル語と日本語がミックスしています(笑)。そういう姿も微笑ましいですし、本当に満足しています」

日本人は「もう少しオープンに、陽気になったらパーフェクト」

 ブラジルで生まれ育ち、日本と中国で生活をしたエリキだが、日本の生活に「これがあったらいいのに」と思うようなことはないのだろうか。

「日本がブラジルから学ぶことやブラジルから取り入れてほしいことはありますか?」という質問に対して、エリキは少し考えて、「日本はいろんな部分でクオリティーが高い国だから、ブラジルが多くのことを学ばないといけない」と笑い、「もちろん、ブラジルにもたくさんのいいところがあります。例えば、ブラジルは国民がすごく明るい。サンバのような音楽もあります。ただ日本のように規律をもう少し重んじれば、パーフェクトな国になるのではないでしょうか」と、彼の母国が日本に学ぶべきところを指摘した。

 そして、「それぞれ見方や考え方があるので、私の考えが必ずしもいいとは思わないでほしいのですが」と前置きして、「日本の人たちはもう少しオープンに、陽気になって、人生を楽しんでほしいなと思います。国民性ではあると思うのですが、仕事もあったりして、その瞬間、瞬間を楽しんでいる感じがブラジルと比べると伝わってきにくいかもしれません。それがあれば、日本人もパーフェクトになると思います」と、自身の考えも口にしている。

 昨シーズンまで中国でも2年間プレーしたエリキは、日本と中国の違いについて「両方とも素晴らしい国ですが、文化は違います。食事も違いますし、国民性も。中国の方々にもいい部分はありますが。日本人の方々がより努力家で、より規律を重んじる。その点で、両国の人には多少の違いがあると感じます」と、印象を語っている。

 また、中国での生活は新型コロナウイルス禍と重なったことで、家族にとって難しい側面が強かったと振り返る。

「私自身は生活でも、サッカーでも問題はなかったのですが、家族は非常に難しい時間を過ごしました。というのも、私たち家族が中国に行っていた時期は、ちょうどコロナ禍だったのです。家族と一緒に過ごすことが国の状況もあってできなかった。その点は非常に苦労しました。非常にいい契約を中国のクラブと交わしていましたが、なかなか家族とともに過ごすことができない。家族の存在は自分にとってすごく大きく、大切なのですが、中国政府の規制で家族と過ごせなかった。中国サッカー協会にも相談して、その部分を緩和してもらえないかと言いました。結局、緩和されませんでしたが、私自身は前向きな人間なので、そうした状況でもクラブに貢献して、クラブの目標を達成するために自分の力を捧げましたが、非常に苦労した時期でした」

日本サッカーは中国よりも「プレーのクオリティーが高い」

 現在は、町田のJ1昇格、J2優勝に向けて力を発揮している両国のサッカーのレベルはどう感じていたのか。「その点は、日本のほうがプレーのクオリティーが高いと思っています」と、両国を比較する。

「多くの日本人選手がヨーロッパでプレーしていますし、国内のサッカーのレベルも日本は非常に高いと思います。中国は、そもそもスタイルが違い、ロングボールが多かったり、コンビネーションプレーがあまりなかったりするスタイルなので、自分にとっては日本のサッカーのほうがスムーズにフィットできると感じますし、その点では中国のサッカーは、ちょっと難しい部分がありました」

 同じアジアの異なる国で経験を積んだエリキは、改めて「今、このFC町田ゼルビア、日本でプレーできて本当に幸せですし、素晴らしいチームメイト、チームスタッフにも恵まれています。自分が歩んでいるプロセスが、本当に価値あるものだと証明できるように、自分のベストを尽くしたいと思いますし、最後には素晴らしい映画のようなストーリーが描けるように、自分の力をチームのために発揮していきたいと思います」と、初のJ1昇格を目指すチームへのさらなる貢献を誓った。

[プロフィール]
エリキ/1994年7月18日生まれ、ブラジル出身。ゴイアス―パルメイラス―アトレチコ・ミネイロ―パルメイラス―ボタフォゴ―パルメイラス(いずれもブラジル)→横浜FM―長春亜泰(中国)―町田。J1通算41試合21得点、J2通算25試合14得点。スピード、ドリブル、優れたゴール嗅覚を武器とする万能型FW。これまで対戦した中で最も衝撃を受けた選手はブラジル代表FWネイマール、元ブラジル代表FWロナウジーニョ。

(河合 拓 / Taku Kawai)



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