浅野は「今すぐ外せとは思わない」 森保ジャパンのFW問題に日本代表OBが見解「オプションがあったほうがいい」
【専門家の目|栗原勇蔵】絶対的なストライカーは必要な反面、オプションも大事
森保一監督率いる日本代表は、6月15日に行われたキリンチャレンジカップのエルサルバドル代表戦で6-0と大勝した。1トップは先発したFW上田綺世(セルクル・ブルージュ)、途中出場のFW古橋亨梧(セルティック)が務めたが、元日本代表DF栗原勇蔵氏は、FW浅野拓磨(ボーフム)とFW前田大然(セルティック)を含めて、バリエーションを持たせておくべきだと説いている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
【PR】ABEMA de DAZN、明治安田J1リーグの試合を毎節2試合無料生中継!
◇ ◇ ◇
森保監督はエルサルバドル戦で、3月シリーズの2試合で採用した4-2-3-1から4-1-4-1に変更してスタート。試合開始わずか10秒でMF三笘薫(ブライトン)が倒されてフリーキックを獲得。キッカーの久保がDF谷口彰悟(アル・ラーヤン)の頭に合わせる華麗なアシストをして電光石火の先制点を奪った。直後には、相手DFロナルド・ロドリゲスが退場となって得たPKでFW上田綺世(セルクル・ブルージュ)がA代表初ゴールを挙げて追加点。数的有利な状況で前半25分には三笘のパスをMF久保建英(レアル・ソシエダ)が左足で決めて国際Aマッチ2ゴール目を挙げた。
前半終了間際には三笘のシュートをGKが弾き、こぼれ球に詰めていたMF堂安律(フライブルク)が決め切り4点目。そして後半15分、久保は相手の股を抜くパスで途中出場のMF中村敬斗(LASKリンツ)の初ゴールをお膳立てした。
森保監督は後半20分、上田に代えて古橋を投入。その古橋は同28分、MF相馬勇紀(カーザ・ピア)のクロスにヘディングシュートで合わせてチーム6点目を挙げ、ゴールラッシュを締めくくった。
森保ジャパンはFW大迫勇也(ヴィッセル神戸)が代表から遠ざかり、後継者探しは急務とされてきた。上田はその筆頭候補で、ポストプレーを含めた身体能力は1トップを務めるに相応しい。ただ、元日本代表DF栗原氏は「上田、古橋、前田、みんなタイプは違う」と、オプションを持っておくことの必要性について見解を述べる。
「上田が毎回スタメンである必要はなくて、対戦相手が格上だと判断すれば前からプレスをかけられる前田、裏に抜けられる古橋を使うなど、オプションがあったほうがいい。絶対的なストライカーも必要だけど、オプションも大事になります」
大事な試合で結果を残してきた浅野を「今すぐ外せとは思わない」
古橋は昨年の9月シリーズを最後に、カタール・ワールドカップ(W杯)や今年3月の森保ジャパン第2次政権の初陣には招集されなかった。さまざまな憶測が飛び交ったなか、9か月ぶりの復帰で結果を残したが、今季のスコットランドリーグ得点王(27ゴール)に輝いた古橋は、現時点で置いておくべき戦力だと栗原氏は主張する。
「古橋はセルティックで文句なしの活躍を見せました。スコットランドリーグのレベルが疑問視されたりしますけど、Jリーグで十分に結果を出してから海外へ行っているので、日本人アタッカーとしてトップレベルであるのは間違いない。日本代表になるとクラブとは違うし、少し合わなかったり仕方ないところもある。ただ、彼のポテンシャルと人間性も加味すれば、僕が監督だったら現時点ではずっと入れておきたい選手です」
また、エルサルバドル戦で後半20分から途中出場し、ゴールなしに終わった浅野に関しても、カタールW杯グループリーグ初戦のドイツ戦で決勝ゴールを決めるなど、大事な場面でネットを揺らしていることを考えれば、彼に対する厳しい声は不当だと栗原氏は語る。
「浅野はやっぱり一発があるし、W杯という1番大事な舞台でも結果を残した実績があります。勝負強さはすごく大事だし、今すぐ(メンバーから)外せとは思わない。仮に浅野を外すとして、代わりに誰を入れるのか。すぐに目ぼしい候補がいるかと言えば、あまり思い浮かばない。あの大舞台で結果を出してくれた選手は残しておきたい、使いたいという気持ちも分かります。森保監督の信頼度はきっと高いはずです」
上田が怪我によりエルサルバドル戦翌日にチームを離脱したこともあり、20日のペルー代表戦、そして今後の戦いで森保監督がどのようにFW構成をマネジメントしていくのか、注目が集まる。
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。