J1リーグ「前半戦ベストイレブン」 浦和の鉄壁CBコンビは文句なし、名古屋&京都のSBが特大インパクト

前半戦でインパクトを放った11人とそこに続く7人を厳選【画像:FOOTBALL ZONE編集部】
前半戦でインパクトを放った11人とそこに続く7人を厳選【画像:FOOTBALL ZONE編集部】

【識者コラム】リーグ前半戦でインパクトを放った11人とそこに続く7人を厳選

 J1リーグは各クラブの消化試合数にばらつきはあるものの、概ねシーズン前半戦の17試合を終え、上位、下位クラブの差が鮮明に。好調なシーズンを送る選手たちの活躍も目立ったなか、ここではインパクトを放った11人を「前半戦ベストイレブン」として選定した。

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 結論を言うと、かなり悩ましい選考となった。理由としては評価のポイントをどこに置くかでチョイスが変わり得るからだ。ただ、基本的にはどれだけチームの勝利に貢献できているかが大前提で、そこに個人のパフォーマンス、オフェンシブなポジションであれば得点やアシスト、ディフェンシブなポジションはチームの失点数といった要素も加味しながら、最終的にはこのベスト11をスタメン、そして7人のサブで挑んだ時に、J1で首位に立てるかどうかという遊び心も加えた。そのため外国籍選手はベンチも含めて5人までとした。

 GKから見ていくと、攻守両面を評価基準としながら、セーブ数などはどうしてもピンチの多いチームのほうが高くなってしまう。そのためチームを救うビッグセーブはもちろん“グローブの汚れていないキーパー”の価値も加味して西川周作(浦和レッズ)にした。ただ、パフォーマンスの安定感ではミチェル・ランゲラック(名古屋グランパス)も遜色なく、サブに選んでいる。

 サイドバック(SB)は攻守をほぼフィフティーフィフティーで、実際に観たパフォーマンスと走行距離などのデータを加味して、右SBを白井康介(京都サンガF.C.)、左SBを森下龍矢(名古屋)にした。白井に関しては京都が14位ということで悩んだが、個人のパフォーマンスに加えて、勝利貢献度の高さを考慮している。

 森下はご存知のとおり、3バックの名古屋では左右ウイングバックで出場しているが、どちらでも上下動、ビルドアップ、チャンスメイクへの関わり、1対1の守備などが素晴らしく、日本代表にふさわしい働きだったと言える。サブには左右のSBができてセットプレーのキッカーも担える初瀬亮(ヴィッセル神戸)を入れた。

 センターバック(CB)は最小失点の浦和からアレクサンダー・ショルツとマリウス・ホイブラーテンのコンビをそのまま、GK西川とのセットで選んだ。この3人を切り離して評価するのが難しいこともあるが、個人としても守備面では文句のつけどころがない。ホイブラーテンに関してはビルドアップでもう少し、展開のスムーズさが出てくると浦和の攻撃パフォーマンスを上げられるはずだが、開幕直前の加入ということを考えても上々で、ロングフィードやセットプレー時の空中戦といった攻撃面の貢献も高く評価できる。

 サブには守備強度や対人戦の勝利、統率力などを総合的に見て中谷進之介(名古屋グランパス)を選んだ。奈良竜樹(アビスパ福岡)や惜しくもベンチに入れられなかったが植田直通と関川郁万の鹿島アントラーズのCBコンビもほぼ遜色ない。結論を言うとショルツは飛び抜けており、本来なら“殿堂入り”で神棚に上げて、Jリーグのセレクト企画では対象外にしたいところだ。

前線は二桁得点の2名、ゴラッソの多かった浅野雄也はあと一押しに欠ける

 中盤は色んなタイプがいるので難しいが、攻撃的な評価でトップの伊藤涼太郎(アルビレックス新潟→シント=トロイデン)、守備的な評価で稲垣祥(名古屋)を選出した。齊藤未月(神戸)もボールを奪う能力、ファーストパスをつなげる能力ともに高いが、リーグ戦全17試合に出場している稲垣を優先した。伊藤は2列目の選手として7得点4アシストという数字面の評価に加えて、攻撃面での存在感、そして何より観るものを楽しませてくれる意外性にあふれたプレーも素晴らしかった。ベルギー1部シント=トロイデンに移籍が決まり、年間のベスト11に選ばれる可能性はなくなったと思うが、この半年間の輝きは多くのファンの記憶に刻まれたはずだ。

 左右のサイドアタッカーは右が武藤嘉紀(神戸)、左がエウベル(横浜F・マリノス)の2人に。武藤は6得点7アシスト、エウベルは5得点6アシスト。個人のパフォーマンスもさることながら、勝利に直結する局面打開やフィニッシュ、ディフェンスでの貢献度も加味している。攻撃力なら金子拓郎(北海道コンサドーレ札幌)が2人に勝るとも劣らないが、ボールを受けるところでのロストなど、安定感の部分でサブにとどめた。

 鈴木優磨(鹿島)に関しては8得点4アシストという結果に加えて、存在感を考えればベスト11に入れてもおかしくないが、配置の関係もあり今回は“12人目のレギュラー”として控えてもらう。本人が目標とする25ゴールポイント(ゴールとアシストの合計値)に限りなく近いペースだが、チームにタイトルをもたらしてこそ満足のシーズンとなるだろう。そのためには周りのサポートももう少し必要だ。インパクトでは8得点、しかもゴラッソの多かった浅野雄也(札幌)も触れないわけにはいかないが、ベスト11にはあと一押し欲しかったところだ。

 2トップは素直に結果を評価して、13得点のアンデルソン・ロペス(横浜FM)と11得点の大迫勇也(神戸)をスタメン、サブに9得点のキャスパー・ユンカー(名古屋)を選んだ。大迫に関しては圧倒的なポストプレーはもちろん、高強度のサッカーを牽引するディフェンスも見事だった。ただ、ルヴァンカップを休養に充てたとはいえ、前半戦の負荷が大きいようにも思えるので、神戸が後半戦も上位に残って優勝争いやACL(AFCチャンピオンズリーグ)出場権争いに残っていくには大迫の負担をいかに経験して、1年間のパフォーマンスを持続させられるかが鍵になりそうだ。

 このチームを率いるにふさわしい監督として、J1王者でもある横浜FMを率いるケヴィン・マスカット監督を推したい。就任1年目で浦和をアジア王者に導き、ここまで4位と健闘するマチェイ・スコルジャ監督、就任2年目で名古屋に推進力の高いスタイルを植え付けた長谷川健太監督、そして昨年は終盤まで残留争いを強いられた神戸を上位に引っ張り上げた吉田孝行監督も評価したいが、やはり相手のマークが厳しいなかでも前半戦の首位に導いたマスカット監督の手腕を称えたい。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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