進化する久保建英、仏記者がバルサ戦躍動に感銘「ヴィニシウスとは言わないまでも…」【現地発コラム】

ソシエダでプレーする久保建英【写真:Getty Images】
ソシエダでプレーする久保建英【写真:Getty Images】

古巣バルセロナ戦で途中出場の久保、決定機を演出して存在感

 レアル・ソシエダMF久保建英はFCバルセロナ戦で途中出場し、短い出場時間ながら勝利につながる得点に関与する働きを見せ、通算6回目の対戦にして初めてバルセロナから白星を勝ち取った。

 4位につけるソシエダは現地時間5月20日に開催されたラ・リーガ第35節で、前節に4季ぶり27回目の優勝を決めたバルセロナとアウェーで対戦。イマノル・アルグアシル監督はあとに続くタイトな日程を考慮し、前節から5人を入れ替える大幅なローテーションを実施すると、久保は3試合ぶりにベンチスタートとなった。

 久保が少年時代に所属していたクラブであるバルセロナと、カンプ・ノウで対戦するのはキャリア通算6回目となった。過去5回はいずれも敗戦しているなか、今回出番が訪れたのは後半13分。4-3-3の右ウイングに入ると立て続けにアンドニ・ゴロサベルやアレクサンデル・セルロートの決定機を演出し、存在感を見せつけるようなプレーを連発した。

 同26分、スビメンディのボールカット後に久保は自陣からドリブルを仕掛け、2点目となるセルロートのゴールに関与。さらに同36分には自らシュートを打つも、DFにブロックされ惜しくもゴールとはならなかった。

 途中出場ながら十分に存在感を発揮した久保の貢献もあり、ソシエダは2-1で勝利を手にし、1990-91シーズン以来、29試合ぶりにカンプ・ノウで勝ち点3を獲得。久保も公式戦6回目にして初めてバルセロナから勝利をもぎ取った。

バルセロナを中心にリーガ取材を行うフランス人記者フランソワ・ミゲル・ブーデ氏が久保建英について言及【写真:高橋智行】
バルセロナを中心にリーガ取材を行うフランス人記者フランソワ・ミゲル・ブーデ氏が久保建英について言及【写真:高橋智行】

地元紙が久保を称賛「サイドで危険な存在となり、別次元のレベルだった」

 短時間ながら効果的な活躍を見せた久保に対して地元紙は、途中出場だったため若干低めの評価をしたようだ。クラブの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、スタメン選手たちを軒並み4点(最高5点)以上と評価したのに対し、久保については「枠内シュートはバルデに阻止されたが、相手に立ち向かい、素晴らしいフリーキック(FK)をセルロートに送った」と3点(最高5点)をつけた。

 もう1つのクラブの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」は、「いつもどおり決定的な役割を果たし、2点目の鍵となった。サイドでコンスタントに危険な存在となり、別次元のレベルだった。セットプレーではセルロートに素晴らしいボールを届けた」と評価するも、途中出場のため採点なしとした。一方、スペイン全国紙「AS」「マルカ」の評価はともに2点(最高3点)と上々だった。

 これまでフランスメディア「Eurosport.fr」、「Onze Mondial」、「So Foot」、「Le Figaro」などで記事を執筆し、現在スポーツ情報サイト「Flashscore」で記者としてバルセロナを中心にリーガの取材を行っているフランス・マルセイユ出身のフランソワ・ミゲル・ブーデ氏が、この日の久保の印象を語ってくれた。

「途中からピッチに入ったにも関わらず素早くフィットして、上々のパフォーマンスを見せたと思う。何度も決定機を作り、FKからセルロートに惜しいゴールチャンスを与えたからね。レアル・ソシエダのベストプレーヤーの1人なのはもちろん、ヴィニシウスとは言わないまでも、リーガの中でも特に目覚ましい活躍を見せている選手の1人だ。レアル・マドリード戦や今日のバルセロナ戦でも分かるように、彼は今、自分が高いレベルにあること、そして毎シーズン、止まることなく進化し続けていることをプレーで示している。今季は彼にとって間違いなくスペインでの最高のシーズンになっているし、年々やれることが増えていることも証明している」と大絶賛した。

ソシエダ戦が行われたバルセロナの本拠地カンプ・ノウの賑わい【写真:高橋智行】
ソシエダ戦が行われたバルセロナの本拠地カンプ・ノウの賑わい【写真:高橋智行】

フランス人記者が久保の好調要因を指摘「特徴をよく理解してもらっている」

 またブーデ氏は、久保の今季好調の要因について「それは自分の特徴をイマノルによく理解してもらっているからだと思う。というのも、ビジャレアル時代のウナイ・エメリ指揮下ではすべて上手くいかなかったからだ。イマノルは久保が何を望んでいるのか、そして彼がチームに何をもたらすことができるかをよく分かっている。さらにチームにはダビド・シルバやミケル・メリーノのようなトップクラスの選手がいて、そのなかで成長を促してもらっているように感じているよ」との見解を述べている。

 続けて、「早いもので今シーズンもあと少しで終わりを迎えるが、この1年間で大きく成長した久保が、出場濃厚となっている来季のチャンピオンズリーグ(CL)でも非常に重要な役割を果たすと私は見ている。そして将来的にリーガにおいてレアル・ソシエダのキープレーヤーになると思うし、CL(UEFAチャンピオンズリーグ)での活躍を楽しみにしているよ」と大きな期待を寄せていた。

 久保が常々目標と語る来季のCL出場権獲得まであとわずか。アルメリア、アトレティコ・マドリード、セビージャとの3試合のうち2勝を挙げれば、勝ち点5差で5位につけるビジャレアルの結果に関係なく、ソシエダは自力で10シーズンぶりに欧州最高の大会への返り咲きを果たすことができる。

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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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