浦和GK西川周作、立ち上がり5分の接触で「目が覚めた」 若手へつないだACL優勝の意義「成功体験として…」

浦和のゴールを守った西川周作【写真:徳原隆元】
浦和のゴールを守った西川周作【写真:徳原隆元】

西川は好セーブを連発し無失点に防いだ

 浦和レッズは5月6日にAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の決勝第2戦、アル・ヒラル(サウジアラビア)戦に1-0で勝利。敵地との2戦合計を2-1として3回目の優勝を果たした。無失点でホームゲームを乗り切ったGK西川周作は「勝って、みんなの成功体験として歴史に名を刻んだ」と、この優勝の意味を語った。

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 西川は2014年に浦和へ加入すると長年にわたり正GKを務めた。その間、ACLを17年に制したが、19年には準優勝。いずれも対戦相手はアル・ヒラルだった。リターンマッチであり、このアジアにおけるクラブレベルの大会における東西の代表クラブの決戦に「19年の表彰式の悔しさは、今でも鮮明に覚えているものがある。今日は絶対笑って全員で帰りたいと思いが強かった」という思いで臨んだ。

 その試合はアクシデントで始まった。前半立ち上がりの5分になろうというところ、相手FWオディオン・イガロとFWFWアブドゥラー・アルハムダンがゴール前に突進してきたところで激しい接触。ピッチに倒れ込んだ西川は苦悶の表情を浮かべた。最悪の事態に備え、ベンチではGK鈴木彩艶が体を動かし始めた。しかし、西川は「あの接触で本当に目が覚めたというのが正直あって」と、試合への集中を増した。「試合前は『いつも通りやろう』とか『楽しんでやろう』って思いながら入りますけど、いざ立ってみるとプレッシャーを感じている自分がいるのかなと、ちょっと開始直後は思った」と、百戦錬磨のベテランでさえ難しい舞台で、かえって邪念が払われたのかもしれない。

 そして、西川は前半にブラジル人FWミシャエウ、19年に大活躍を許したペルー代表MFアンドレ・カリージョのシュートを好セーブで弾き出すと、後半終了間際にはナイジェリア代表FWオディオン・イガロにペナルティーエリア内で許したシュートも弾き出した。アル・ヒラルが3人の外国人枠に選んだアタッカーたちを守護神が完全封殺。歓喜の瞬間を味わった。

 昨年はキャプテンを務めたが、19年のACL決勝での敗戦後に解体的な出直しを図ったクラブは世代交代を1つのテーマに進めた。西川も例外ではなく、日本代表にも選出された鈴木と高め合いつつもポジションを争う。一昨シーズンにはレギュラーを奪われた時期もあった。また、長年の精神的支柱だったMF阿部勇樹の引退、DF槙野智章やDF宇賀神友弥、MF柏木陽介、FW武藤雄樹といった盟友たちの退団。さらに、FW興梠慎三も昨季は北海道コンサドーレ札幌へと期限付き移籍した。チームが苦しい時に鼓舞できる存在が去ったことで、西川は多くのことを抱え込んで苦悩した。それでも今季の興梠復帰も含め、チームがまとまる力が生まれてきた。

「後ろには自分がいて、前には慎三がいて、サイドには(酒井)宏樹がいて、真ん中に憲ちゃん(岩尾)がいて、本当にベテランと言われる選手がしっかりと仕事をすることで若い選手がよりノビノビできる。今日は前線から慎三が追ってくれたり守備で頑張ってくれたり、あのような姿勢を見ると後ろの自分たちも勇気づけられる。逆に自分がしっかり守ればという思いが強かった」

「若い選手への成功体験としてこのACLを絶対取りたい」

 この試合のスタメンにはMF小泉佳穂やMF大久保智明、MF伊藤敦樹にDF明本考浩といった、20年以降に加入した20代の選手たちがスタメンに名を連ね、ベンチにはユース所属の17歳MF早川隼平も入った。だからこそ、西川には自分がACLでの経験を得ながら成長してきたことを踏まえての思いがある。

「僕が思っていたのは若い選手への成功体験としてこのACLを絶対取りたいなと。この経験値は、自分も2017年に取ったのが非常に大きかった。アジアに対しても、その先にあるクラブワールドカップもそうですけど、本当にここでやれるという自信をつければ、間違いなく日本代表にも入っていける選手がたくさんいるし、自分もまだまだ目指してやっていきたいなと思っているんですけど、そういった意味でも勝って、みんなの成功体験として歴史に名を刻んだのが良かった」

 クラブとしてアジアを戦う経験値は蓄積してきた浦和だが、多くの選手たちにとって自分がアジア王者になったチームの一員になれたことは最高の成功体験になる。この優勝が浦和と選手たちをどのように成長させるのか、導いてきたベテランたちの果たした役割と意義はこれから本当の意味で現れてくるのかもしれない。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)



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