三笘薫のロングドリブル、シャッター越しに見えた躍動プレー ピッチ視点から伝わったダイナミック感

日本代表MF三笘薫【写真:徳原隆元】
日本代表MF三笘薫【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】スタンドからの視線を一身に集めた前半早々のプレー

 細雨が静かにピッチを濡らすキックオフからわずか3分、国立競技場のスタンドを埋めた観客たちから歓声が上がった。そのときスタンドからの視線を一身に集めたのが三笘薫だった。

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 ゴール裏で構えるカメラで捉えた三笘は、自陣でボールを受けると迷うことなくウルグアイ陣内に向かってドリブルを開始する。追うマーカーはマヌエル・ウガルテだ。

 ドリブルする三笘の内側を浅野拓磨が縦に走り抜け、前方にパスを出すように要求する。しかし、マーカーが付いていたからか、サムライブルーの背番号9番は浅野がマーカーを引き連れながら駆け抜けてできたスペースへのドリブルを選択する。

 なおもウガルテのマークを受けながらドリブルを続ける三笘は逆サイドの味方を探すようにルックアップするが、プレーはパスではなくさらに敵陣深くドリブルで侵入していった。動きを封じようと接近するセバスティアン・コアテスにはボールを跨ぐフェイントで翻弄。縦へと抜けると見せかけてさらにゴール中央に向けてボールを運ぶ。

 このあとシュートを放ったが、サンティアゴ・ブエノのブロックに遭い惜しくもゴールとはならなかった。だが、高速シャッターによって写真に切り取られた、この三笘のダイナミックな連続プレーに観客のボルテージは一気に上昇した。

 2022年カタール・ワールドカップ(W杯)終了後も指揮官が続投し、再始動した第2次森保ジャパンは初戦の相手として南米の古豪ウルグアイを迎え対戦した。結果は先制点を奪われながらも後半30分に西村拓真の同点弾で追い付き、1-1の引き分けに終わった。

 試合が始まり時間の経過とともに、次第に雨脚は強まりピッチコンディションはよりスリッピーとなっていったが、そうしたことなどモノともせず、三笘は上記したドリブル突破をはじめ果敢にウルグアイゴールの攻略を目指し奮闘した。

 三笘に加え、後半16分から登場し、西村のゴールを演出した伊東純也のドリブルも日本の見せ場となった。

第2次森保ジャパンの初陣は個人能力に頼る場面が目立った試合に

 だが、視点を変えれば新たなスタートを切りチームを構築する時間が少なかったことも影響していたが、日本からはピッチに立つ選手全体で相手守備網を崩す戦術的な動きはあまり見られず、これまでの森保一監督のチームがそうであったように個人能力に頼る場面が目立った試合となった。行き当たりばったりの感は否めなかった。

 それでもこの試合のように実際に三笘や伊東といった個人の力によって状況を打開し、ゴールへのチャンスが生まれるのなら、彼らの力に頼るのも間違えではないと思えてきた。昨年、カタールの地で世界王者の称号を手に入れたアルゼンチンもリオネル・メッシの能力に頼るところが大きかったのだから。

 ただ、アルゼンチンはメッシの能力だけでなく、周囲の選手がエースをサポートし、背番号10番が創り出すプレーと上手く融合し、チーム力をさらに高めていたことも事実だ。

 日本で考えれば、W杯後に急速に存在感が増した三笘や、輝きが続く伊東でも万能ではない。そのドリブルを筆頭とした個人能力が、どんな相手にも必ず通用するとは限らない。ましてこの試合のようにウルグアイの激しいプレッシングを受け、苦しい状況をなんとか打開してくれという感じで、組織的に相手を崩す体制が整っていない状況からボールを託されても、三笘や伊東といえども決定的なプレーを生み出すのは簡単なことではない。

 それだけにある一定の選手に頼るのなら、せめてその彼らの力を最大限に発揮できるような戦い方が必要で、それこそが今後、日本が目指す戦術となる。

 仕切り直しとなったウルグアイ戦は、さらなる高みを目指すための戦い方を浮き彫りにしたが、続投した森保監督はこれから効果的な手を打てるのか。その手腕が注目されるところだ。

徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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