新潟の“ファンタジスタ”伊藤涼太郎、なぜ沈黙? 「壁が大きかった」古巣戦で抱いた重圧

浦和戦で不発に終わった伊藤涼太郎【写真:Getty Images】
浦和戦で不発に終わった伊藤涼太郎【写真:Getty Images】

今季のJ1でブレイク中の伊藤、古巣・浦和戦で躍動ならず悔しさ噛み締める

 アルビレックス新潟戦は3月18日のJ1第5節、浦和レッズ戦に1-2での敗戦になった。浦和に所属歴があり、今季のJ1でブレイクしていると注目されていたMF伊藤涼太郎は「自分としては、プロになって一番悔しい試合だった」と振り返った。

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 伊藤は岡山県の作陽高校から2016年に高卒ルーキーとして浦和入り。当時指揮したミハイロ・ペトロヴィッチ監督も才能を評価していたものの、なかなか出場機会は得られなかった。水戸ホーリーホックや大分トリニータへの期限付き移籍を経て2020年に浦和復帰。クラブが掲げた3年計画のスタートに、当時の大槻毅監督の指揮下で競争に参加する形になったがポジションは確保できず。22年に新潟への完全移籍となっていた。

 それでもJ2の1シーズンで昇格の原動力になると、今季の開幕から4戦無敗でのチームでも大きな存在感を放ち、日本代表に推す声も上がるほどのブレイクを見せていた。そして、この日は古巣の浦和戦で、所属時に同年代の若手選手として競争してきた浦和の選手たちもまた、そうした活躍を見せている伊藤を意識。MF伊藤敦樹やMF小泉佳穂もまた、今週の公開練習後にも「仕事をさせない」という言葉を残していた。

 試合が始まると序盤は伊藤のテクニックが発揮される場面もあったが、それはいずれもゴールから遠い位置になった。浦和のマチェイ・スコルジャ監督が「特にゴールキックで新潟は動いて伊藤(涼太郎)のスペースを作ってくる」と話したように、研究されてもいた。前半30分くらいまでは先制ゴールも含め新潟の良さが出る試合だったが、そこからは苦しんだ。結局、浦和に前半のうちに逆転されると後半はゴール前まで進めなくなった。

 伊藤は試合後に「今までお世話になったクラブでもありますし、それと同時にプロとしての厳しさを与えてくれたクラブなので。自分のゴールやアシストで勝ってやろうと、この1週間すごい良い準備をしてきたつもりでしたけど、それをうまくピッチに出すことができず、違った形で浦和からプロの厳しさを与えられた」と悔しがった。

 それでも試合の最後、左45度付近で得たフリーキック(FK)のチャンスは見せ場だった。しかし、ファーサイドを狙ったシュートは曲がり切らず枠外へ。「この90分間で自分にはほとんどチャンスがなくて、唯一あのFKだけがチャンスでしたけど、すごい壁も大きく感じましたしプレッシャーが伝わったので、もっともっと練習しないといけない」と、その圧力に屈した自分への悔しさを語っていた。

日本代表への待望論浮上も「まだ始まって5試合」

 とはいえ、厳しいマークを受けるのは実力を認められることの証明でもある。伊藤は「自分に(パスが)入った時に、自分のところで何かするよりもワンタッチではがしたり、人数をかけるより、自分がサイドに流れたり、もっとボールを持った時の工夫だけじゃなくて、ポジションの工夫も必要だと感じました。パスの回し方もそうですし、今日は真ん中で何とかしようというのが強すぎて、もう少しポジショニングを変えれば良かったというのが終わってみての感想です」と、それを逆に利用してチームの攻撃を機能させることも次の引き出しとして感じたようだ。

 J1開幕から約1か月で、トップレベルの注目を集めたと言える。日本代表への待望論のような周囲の評価も耳に入る。それでも「まだ始まって5試合ですし、その中で多くの得点に絡んでますけど、それを1年間続けないと意味がないですし、今まで代表で活躍している選手は活躍し続けているので。たかが4試合、5試合の話ではないですし、自分はもっと多くの試合で1シーズンすべての試合で活躍しないと代表は見えてこないと思っているので、個人的にはまだまだだと思っています」と、地に足を着けた言葉を残した。

 浦和加入時には、2020年に開催予定だった東京五輪世代のトップ下として活躍を期待する声も大きかった。思い描いたプランよりは遅咲きになったかもしれないが、高い技術と相手の意表を突くようなプレーを組み合わせた「ファンタジスタ」の系譜と言えるプレーで伊藤はJ1を盛り上げてくれそうだ。

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