霜田新監督率いる松本がJ3開幕戦で”参入組”の奈良撃破 ”点を取る仕組み”でJ3優勝へ

J3開幕戦を勝利で飾った松本山雅(写真はイメージです)【写真:Getty Images】
J3開幕戦を勝利で飾った松本山雅(写真はイメージです)【写真:Getty Images】

敵地でのJ3開幕戦で2-0と勝利

 松本山雅FCは3月5日、J3リーグ開幕戦で奈良クラブと対戦。”参入組”の奈良にとっては記念すべきJリーグ初ゲームとなったが、アウェーの松本がロートフィールド奈良に駆けつけた約1500人のサポーターに2-0の勝利を届けた。

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 33歳のフリアン監督が率いる奈良クラブは”知のフットボール”をテーマに、チームとしての明確な戦術設計を基に、選手たちがロジカルに判断しながらボールを幅広く動かしてくる好チーム。そういう相手に対して、松本での”初陣”となった霜田正浩監督は「キャンプでやってきた半分ぐらいしか出せなかった」と語る。

 実際に公式スタッツのシュート数も7本(奈良は3本)と多くなかったが、指揮官が掲げる得点を取るための”仕組み”は早速見られた。4-3-3をベースに、自陣からボールをつなごうとする奈良に対して、4-2-1-3の布陣で前からプレッシャーをかけてボールを奪いに行き、マイボールになればチームとしてゴールに向けて迫力ある攻撃を披露した。

 前線の守備も期待されたFW小松蓮は「霜さんとはレノファ山口から一緒にやっているなかで、前線からのプレッシャーとか守備のスイッチ入れるところはすごい評価してもらってた。そこはベースとしてやって、もっとゴールを取るというところを貪欲にやれと言われていた」と語る。

 そのゴールを取るフィニッシュに関して、小松は「うちのいいところというか。ゴール前に1人じゃないっていう。複数入ることによって選手が空いてくる」と語る。

霜田監督は「シーズン76得点」を指標に攻撃的サッカーを目指す

 小松による先制点はセットプレーから相手のファウルによるPKだったが、右ウイングの滝裕太はもちろん、サイドバックの下川陽太の攻め上がりから同サイドのウイングである榎本樹、小松を中心にトップ下の菊井、逆サイドの滝などがクロスに入り込むシーンが目立った。

 元JFA技術委員長でもある霜田監督は2018年から3シーズン率いたレノファ山口で、オナイウ阿道(トゥールーズ)や小野瀬康介(湘南ベルマーレ)といった選手を指導し、ステップアップに導いてきた。それも「前線の3人に点を取らせる仕組み」を掲げて、再現性の高い攻撃をチームに植え付けた結果で、チームが勝つための仕組みが個人の輝きにもつながるというのが指揮官のモットーだ。

 J3に降格して1年目だった昨シーズンは名波浩前監督(現・日本代表コーチ)の下で4位となり、1年でのJ2復帰を逃した。その大きな要因が得点力不足。U-20日本代表の横山歩夢が11得点を記録してJ1サガン鳥栖に移籍したが、チームとしてはJ3優勝したいわきFCの72点より25点も少ない46得点だった。

 霜田監督は76得点を指標として挙げており、昨シーズンの優勝チームを上回るような攻撃パフォーマンスが求められる。3トップと”10番”と呼ばれるトップ下が主な得点源となるが、その1つの鍵は前からの守備。ボールを奪ったら前に矢印を引くが、必要に応じてうしろからつないで崩すことにも取り組んでいるが、2点目となった村越凱光のミドルシュートによるゴールは菊井のボール奪取から生まれたものだ。

 今シーズンのJ3はSC相模原の戸田和幸監督やいわてグルージャ盛岡の松原良香監督といった新鋭から昨季ガンバ大阪をJ1残留に導いた、テゲバジャーロ宮崎の松田浩監督など、話題性の高い監督が就任しており、いろいろな戦い方で松本に立ちはだかるはず。それでもJ2に上がるだけでなく、その先も見据える霜田監督の松本山雅がどう成長しながら、昇格ロードを描いていくのか。楽しみが膨らむ開幕戦となったことは間違いないだろう。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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