今季J1の上位争いを日本代表OBが予想 「面白い存在」とダークホースに挙げたのは?

昨季王者に輝いた横浜F・マリノス【写真:徳原隆元】
昨季王者に輝いた横浜F・マリノス【写真:徳原隆元】

【専門家の目|栗原勇蔵】横浜FM、鹿島、FC東京の戦力は「優勝してもおかしくない」

 2023年シーズンのJリーグが開幕したなか、「FOOTBALL ZONE」では30周年を迎えた今シーズンを特集。現役時代、横浜F・マリノス一筋で18年間プレーし、リーグ優勝も3回経験した元日本代表DF栗原勇蔵氏に、今シーズンのJ1優勝争いを予想してもらった。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 昨季王者の横浜FMが2連覇を目指すJ1リーグの争いについて、元日本代表栗原氏は「監督が続投していて上積みのあるチームが、今年は特に有利だと思います。監督が代われば少なからず新しいサッカー・理想のサッカーを目指してやり方が変わるので」と見立てる。

 そのなかで、上位争いの候補には横浜FM(ケヴィン・マスカット監督)、川崎フロンターレ(鬼木達監督)、鹿島アントラーズ(岩政大樹監督)、サンフレッチェ広島(ミヒャエル・スキッべ監督)、FC東京(アルベル・プッチ・オルトネダ監督)、名古屋グランパス(長谷川健太監督)の6チームを挙げた。

 横浜FMはリーグ戦開幕2連勝、ヴァンフォーレ甲府を下した富士フイルムスーパーカップを含めて、好調なスタートを切った。2022年JリーグMVPの日本代表DF岩田智輝(→セルティック)、元日本代表FW仲川輝人(→FC東京)と主力が抜けた穴は大きいものの、それを感じさせない戦いぶりを見せていると栗原氏は語る。

「F・マリノスはキャンプから見ていて仕上がりがすごくいいです。守備陣は岩田が抜けたの痛かったですけど、畠中(槙之輔)も去年より調子が上がってるし、柏レイソルから補強した上島(拓巳)も戦力としてかなり目処が立っている。ベテランの實藤(友紀)がいて、角田(涼太朗)とエドゥアルドもすごくいいので誰を使うのかすごく難しい。ほかのチームならスタメンで出れる選手たちが2枠を争うハイレベルな戦いです。

 攻撃陣はまだ身体が仕上がっていない選手もいる印象でしたが、ゼロックスとJリーグで3勝しているのでやはり力はあるなと思いました。公式戦2試合連続ゴールの西村拓真は、相変わらず嗅覚があると思いましたし、アンデルソン・ロペスに関しては、去年よりもまた1つギアを上げてやってくれそうだと期待できると気がしています。もちろん仲川がいたほうが戦力的には高いですが、今のF・マリノスの強みは、誰か1人に依存するのではなく、補強してきた選手も確実に結果を残すチーム。(大分トリニータから加入した)井上健太もスピードがあって、面白い存在だと思いました」

アルベル体制2年目のFC東京【写真:徳原隆元】
アルベル体制2年目のFC東京【写真:徳原隆元】

念願の初優勝を目指すFC東京は3トップが鍵

 岩政監督が初めてシーズン開始から指揮を執る鹿島も、“常勝軍団”と言われる歴史を持つクラブらしく、「楽しみなチームの1つ」だと栗原氏は話す。日本代表DF植田直通らを筆頭に充実した選手層は、彼らの大きな強みだ。

「3トップの左で起用されている新戦力の知念(慶)は元々力のある選手。京都(サンガF.C.)戦、川崎戦と鈴木優磨のアシストから点を取っているのでコンビネーションも悪くないし、ポストプレー、裏への動きもできて、勢いを維持できれば得点王争いにも絡んでくるかもしれない。荒木(遼太郎)がサブ、レベルの高い広瀬陸斗も開幕2試合で出番がないので、選手層の厚さはリーグトップクラスです。ディエゴ・ピトゥカもすごくいい選手。昌子(源)、植田(直通)が常勝軍団のメンタリティーを浸透させて、若い選手たちもいろいろ学んでまたレベルが上がるはずです。(FC町田ゼルビアからの)新加入の佐野海舟は早速スタメンで出ていて、このチームをまとめるキーになるポジションを任されているので、注目選手です」

 アルベル監督2年目を迎えたFC東京は、開幕2試合で1勝1分。総得点「3」(1つはオウンゴール)のうち、MF渡邊凌磨とFWアダイウトンがスコアラーとなっているが、念願の初優勝を目指すうえではFWディエゴ・オリヴェイラ、新加入の仲川、アダイウトンの3トップが鍵を握ると栗原氏は予想する。

「3トップのカウンターの威力はあって、仲川とアダイウトンはタイプも違うので攻撃のバリエーションは広がった。FC東京の鍵は、3トップがどれだけ点を取れるか。『うしろは守るから、お前たち行ってこい』というイメージで、3人で計40ゴールくらい決めたら、必然的に優勝争いをしていると思います。松木(玖生)という若手が台頭しているなかで、小泉(慶)という経験豊富な素晴らしい中堅選手を獲得できたのは大きいと思います。バングーナガンデ佳史扶が長友(佑都)をサブに追いやるくらいの戦力がある。ワクワクするような選手がたくさんいますね」

栗原氏が今季のダークホースに挙げた湘南【写真:徳原隆元】
栗原氏が今季のダークホースに挙げた湘南【写真:徳原隆元】

湘南を「ダークホース」に指名

 昨季、リーグ3連覇を横浜FMに阻まれた川崎はここまで1勝1敗。栗原氏は「F・マリノスとの開幕戦、試合自体は川崎が支配していた。チームとしての上手さは全く衰えていない」と、優勝候補の一角に推す。

「守備の要だった谷口彰悟(→アル・ラーヤン)がチームを離れましたけど、レアンドロ・ダミアン(帰国中のオフにブラジルで右足間接を手術)、小林悠(左第5趾基節骨骨折でリハビリ中)が戻ってくれば選手層も厚みを増して、優勝候補の1つになると思います。3年目のブラジル人FWマルシーニョは、フロンターレらしい助っ人だと改めて感じました。いつまでも(36歳の)家長(昭博)に頼っていられない。家長の負担が減れば、チームとしてのパフォーマンスも以前のように良くなっていくはずです」

 その一方で、名古屋に関しては「個々の能力が高く、守備から入って守れるチームなので一定の勝ち点を稼げそう」だと地力を認めつつ、「開幕2試合の内容はまだまだ課題がある。特に、攻撃パターンを増やせるかが重要になるでしょう」と、新加入FWキャスパー・ユンカーらの爆発を求めた。

 栗原氏に今季の「ダークホース」を尋ねると、開幕戦でサガン鳥栖に5-1と大勝し、続く第2節でもカタール・ワールドカップ(W杯)に出場した日本代表FW町野修斗がゴールを決めた湘南ベルマーレを挙げた。

「今年の湘南は上位にも行けるし、下位にもなり得る、面白い存在だと思いました。フィールドプレーヤーは永木(亮太)や町野ら日本人選手でほぼ固めてとにかく走る。現役時代からセンスのかたまりで、キャプテンシーも抜群だった山口(智)監督がチームを率いている。開幕戦でハットトリックした大橋(祐紀)と町野の2トップの出来は間違いなく1つのポイントになるところで、開幕スタートダッシュを決める可能性もあるはずです」

 例年以上の混戦が見られるのか、2023年シーズンのJ1からも目が離せない。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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栗原勇蔵

くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。

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