ブライトン三笘、躍動後に語った「見えすぎる」発言の真意 日本人アタッカーが抱く“究極のジレンマ”

三笘薫は何度もアーノルドとマッチアップ【写真:ロイター】
三笘薫は何度もアーノルドとマッチアップ【写真:ロイター】

虎視眈々と狙ったアーノルドの裏

 リバプール戦での三笘は、まさに戦術不要の存在だった。もとい、三笘が“戦術そのもの”だったと言っても良いだろう。なにせ25歳の左サイドMFにボールを渡せば、相手にとって危険極まりない状況が勝手に生まれるのだから。

 前半13分には一瞬で置いてきぼりにされたDFトレント・アレクサンダー=アーノルドが恥も外聞もなくうしろから三笘を押し倒したかと思えば、今度は同18分にDFジョエル・マティプがイエローカード覚悟の反則で止めにかかろうとする。後半2分に生まれたブライトンの先制点に絡んだのも三笘だ。ドリブルでペナルティーエリア内に侵入すると、絶妙なラストパスをファーサイドのMFソリー・マーチへ。相手右サイドバックのアーノルドがわずかに触ったため、残念ながらアシストこそ付かなかったものの三笘から生まれた1点だった。

 まさに絶好調と言える出来でリバプールを翻弄した三笘。ただ、ハイパフォーマンスの背景には三笘なりの冷静な分析があった。

 リバプールはこの試合、4-3-3のシステムを攻撃時には3-2-3-2へと可変させた。ボールを持つと、右SBアーノルドが極端に前に出て、最終ラインはマティプ、DFイブラヒマ・コナテ、DFアンドリュー・ロバートソンの3バックに。その前でMFジョーダン・ヘンダーソン、MFファビーニョが中盤の底を固め、右から押し上がったアーノルド、MFチアゴ・アルカンタラ、MFアレックス・オックスレイド=チェンバレンの3枚が並び、最前線でFWモハメド・サラーとFWコーディ・ガクポが2トップを形成する。試合後の取材で、三笘はこの可変システムにより生まれたスペースを虎視眈々と狙っていたことを明かしてくれた。

「アレクサンダー・アーノルドが僕とマッチアップすると思いましたけど、相手は3バックにして(3トップのブライトンと)マンツーマンで当ててきた。その分、左サイドが空いて、(そのスペースに)うまく(ボールを)運ばせて前進できたのは良かった。何回も仕掛けて押し込む形を増やそうとは思っていましたし、 前半そういうところで(攻守の)切り替えも速かったなと。(そうした試合展開に持ち込み)自分たちの時間が多くあったので良かったと思います」

 また、リバプールの右サイドを切り裂けた理由はそれだけではない。うしろとの関係性も鍵を握っていたようだ。

「4バックのうち2枚が左利きですから、(ボールを)巻いて出せるっていうのは大きい。(左SBのペルビス・)エストゥピニャンとの関係もうまくできているので、その良い縦関係を作れているのも(リバプールの右サイドを崩せた)要因だと思います」

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森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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