「中村俊輔さんみたいなFKが蹴りたくて」 J1王者守護神の“足元”を支えるGKのルーツ

「GKの概念を変える存在になりたい」

――GKはピッチに1人しかいない特殊なポジションで、ほかのポジションに比べると経験やメンタリティーが必要だと言われます。今まさにGKをやっている子供たちに伝える意味でも、高丘選手が考えるGKに必要なものを教えて下さい。

「GKに必要なメンタリティーは本当にたくさんあります。プレーしている時にはいろいろな感情があるんですけど、僕は『適切なタイミングで、適切な感情を出す』ことが重要だと思っています。冷静にやらないといけない場面で、カッとなってしまってはいけない。例えば、3-0で勝っている試合で相手がディフェンスラインの裏に抜け出してGKと1対1になるとします。相手の選手のファーストタッチが長くなり、GKがブレイクアウェー(ゴールから離れて守備をすること)したら取れるか取れないかギリギリのボールだった時に、GKが冷静でいられるかどうかで戦況は大きく分かれます。GKが勢い任せに行ってしまったらPKを取られて、その後の試合展開も一気に変わってしまうかもしれない。でも、冷静に見極められればマイボールにすることができるはず。そんなふうに必要なタイミングで必要な感情をチョイスすることで、最善のプレー選択につながります」

――とても分かりやすいです。GKは冷静さが必要な一方で、時にはチームメイトに厳しい言葉もかけなければいけない場面もありますよね。

「GKには本当にさまざまなメンタリティーが求められています。冷静さ、リーダーシップ、味方にちゃんと強く言えるかどうか。責任感や我慢強さ、ほかにも真面目さ、勤勉さなど挙げたらキリはないですが、どれも重要なメンタリティーです。常に何をどうすれば勝ち続けられるかと考えていると、GKに求められる能力は本当にたくさんあるんだなと日々痛感しています」

――それでは、最後に来シーズンに向けて意気込みをお願いします。

「今シーズンはリーグ優勝という目標を掴み取ることができました。ですが、優勝の仕方の部分までしっかりとこだわりたかったという思いもあります。終盤にホームで2連敗して、ほかのチームに差を詰められてしまった。そういう隙を見せず、突き放すだけの圧倒的な強さを僕たちは求めていかないといけない。そういう意味ではまだまだ満足していません。来シーズンはJリーグ連覇はもちろん、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)、ルヴァンカップ、天皇杯とすべてのタイトルを狙っていく。特に一発勝負ではわずかな隙が致命的なものになってくるので、個人としてもチームとしてもどうやって穴を小さくしていくかが課題になってくると思います。GKとして、そういうタイミングでこそ力を発揮できるような選手にならないといけないと思っています。

 そして今、僕自身は日本でのGKの考え方、概念みたいなものを変えていけるような存在になっていきたいという風に思っています。そのためには、ただ試合に出ているだけではなくて、個人としても圧倒的なものを示していかないといけない。より高いレベルのプレーが求められるなかで、苦しい時にこそ自分の価値を証明できるような、そんな理想のGKを目指していきたいです」

(#3へ続く)

[プロフィール]
高丘陽平(たかおか・ようへい)/1996年3月16日生まれ、神奈川県出身。横浜FCユース―横浜FC―鳥栖―横浜FM。J1通算111試合0得点、J2通算41試合0得点、J3通算4試合0得点。得意のロングキックだけでなく、勇敢な飛び出し、スペースのケア、ハイボールの処理と総合力の高い現代型GK。2022年はチーム唯一となるリーグ戦全試合出場でリーグ最少タイ失点のハイパフォーマンスを披露し、自身初のJリーグベストイレブンに輝いた。

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