【W杯】クロアチア戦で実感…PK戦の“残酷さ”に元主審・家本氏が持論 「勝敗とは違う要素を持っている」

家本氏がPK戦について持論【写真:ロイター】
家本氏がPK戦について持論【写真:ロイター】

【専門家の目|家本政明】クロアチアとのベスト16で、日本はPK戦で敗戦

 森保一監督率いる日本代表は現地時間12月5日、カタール・ワールドカップ(W杯)決勝トーナメント1回戦でクロアチア代表と対戦。1-1の同点で延長戦を終え、ペナルティーキック(PK)戦の末に1-3と敗れたなか、元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏がPK戦について持論を展開している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)

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 初のベスト8を懸けたクロアチア戦で、日本はオープンな試合展開から前半43分にFW前田大然のゴールで先制。しかし後半10分に相手に追い付かれ1-1のまま延長戦へ突入すると、120分でも決着が付かずPK戦へともつれ込んだ。相手GKのビッグセーブもあり日本は3人が失敗し、トータルスコア1-1(PK:1-3)でベスト16敗退が決まった。

 PK戦はその時の“運”にも左右されるものだと言われているが、家本氏は「PK方式は次のステージに進むための手段で、サッカーの試合の勝敗とは違う要素を持っていると思います」と自身の見解を述べている。

「国内外でPK戦の場面を経験してきましたが、1人のレフェリーとしても残酷な方法だなと昔から感じています。PK戦は基本的に『止まっているボールをどこに蹴るか』という心理戦です。そこに蹴るボールの種類などテクニカルな部分が入ってきます」

 PK戦の特徴を理解したうえで、家本氏はそのデメリットにも持論を展開。「この方法は、外してしまった選手に必要以上にスポットが当たってしまいます。戦犯に吊るし上げられたりするなど、チームスポーツなのに個人の勝負になってしまうところで納得感が薄いと感じる所以なのかもしれません」と述べ、「体力の問題もありますが、個人的には再延長のほうが納得できますね。やはりPK戦は、決着をつける方法として選手にとって酷です」と残酷さを語った。

 日本戦でも「寝れないまま朝を迎えました」と明かした家本氏。「PK戦はいつも心が本当に痛いです。レフェリーとしても、あの場にはあまり立ち会たくないですね」と正直な気持ちを吐露していた。

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家本政明

いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。

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