【W杯】伊東へのゴール前ファウルで相手DFにイエローカード、元主審・家本氏が見解 「唯一真っ赤にできないのが…」

家本政明氏が伊東純也へのファウルについて言及【写真:ロイター】
家本政明氏が伊東純也へのファウルについて言及【写真:ロイター】

【専門家の目|家本政明】後半25分ペナルティーエリア手前で起こった事象を考察

 森保一監督率いる日本代表は、11月27日にカタール・ワールドカップ(W杯)グループE第2戦のコスタリカ代表との一戦で0-1と痛恨の敗戦。元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏が、MF伊東純也(スタッド・ランス)がペナルティーエリア手前で倒された場面について見解を示している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)

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 この試合で日本はドイツ戦から5人の先発メンバーを入れ替え、DF山根視来、MF守田英正、MF堂安律、MF相馬勇紀、FW上田綺世を送り込んだ。積極的に前に来ないコスタリカ相手に攻めきれず停滞した試合展開が続いたなか、日本は前半36分にコスタリカに数少ないチャンスからゴールを決められ失点。その後追い付くことができず、0-1の敗戦を喫した。

 そんななか、後半25分には縦パスから伊東が惜しいチャンスを迎えたシーンもあった。MF守田英正(スポルティング)のくさびのパスをFW浅野拓磨(ボーフム)が相手を背負いながらスルー。そのボールを受けた伊東が切り返しで相手をかわすとペナルティーエリア手前で相手に倒され、フリーキック(FK)のチャンスを得る。ファウルを犯したDFフランシスコ・カルボにはイエローカードが提示された。

 ゴール前でのビッグチャンスだったこともあり、該当シーンは“カードの色”を巡り意見が割れていたが、家本氏は「結論として言えば、これはイエローカードだと思います」とレフェリーの判定を支持している。

「色で例えると、“オレンジ”という感じです。ゴールに非常に近い中央の位置のファウルで、伊東選手の前にはオープンなスペースがありました。競技規則に沿って考えると、ゴールへの方向、距離、ボール保持の可能性とDOGSO(後述)の3つの要素は十分あったと言えます。ただ、唯一真っ赤にできないのが、両脇にいた相手選手2枚の位置ですね」

 決定的な得点機会の阻止を意味するDOGSO(通称ドグソ/Denying an Obvious Goal-Scoring Opportunity)は、認定された場合はレッドカードで一発退場となる。適用されるためには、以下4要件を“すべて”満たすことが必要だ。

(1)反則とゴールとの距離
(2)全体的なプレーの方向
(3)ボールをキープ、またはコントロールできる可能性
(4)守備側競技者の位置と数

 家本氏は(4)守備側競技者の位置と数について、「ファウルの位置からすると、片方の選手は間に合わない、もう1人はチャレンジできる可能性はありますが、十分に対応できるのかというとそこは“ダウト”かなと思います」と判定が難しい状況だったことを説明。「真っ赤ではないですが、だいぶ赤に近いイエローカードかなと思います。結論として、それはイエローカードになります」と指摘した。

 また、「この事象では、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)もレフェリーの判断を尊重しました」と判定の流れにも触れ、「個人的に、現場に自分がいて判定を下すとしてもあれで赤は出さず、VAR担当だったとしても主審の判定(イエローカード)をフォローすると思います。W杯を担当するレフェリーにこの場面をレッドカードにする人はいないと思います」と持論を展開していた。

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家本政明

いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。

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