【W杯】「考え方の違いが出ている」 元国際主審・家本氏が見解…プレミアとW杯のレフェリングの“テイスト”変化

コスタリカ戦の主審を担当したマイケル・オリバー【写真:ロイター】
コスタリカ戦の主審を担当したマイケル・オリバー【写真:ロイター】

【専門家の目|家本政明】普段プレミアで笛を吹くオリバー主審が試合を担当

 森保一監督率いる日本代表は、カタール・ワールドカップ(W杯)のグループリーグ第2節・コスタリカ代表戦を0-1で落とした。この試合のレフェリングはプレミアリーグでもお馴染みのマイケル・オリバー氏が担当したなか、元国際審判員としても活躍した家本政明氏にレフェリー目線で同主審の印象を語ってもらった。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)

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 日本はグループリーグ初戦でドイツ代表に2-1で勝利し、大金星を挙げた。その激闘から日本は5人の先発メンバーを入れ替え、DF山根視来、MF守田英正、MF堂安律、MF相馬勇紀、FW上田綺世を送り込んだ。

 前半は日本がボールをある程度支配するなかで、守備を固めるコスタリカを攻めきれず、膠着状態が続いた。0-0のまま迎えた後半に選手を交代しながら打開を図るも、なかなか決定機は生まれない。そうしたなか同36分、日本は自陣でのクリアが中途半端になったボールを奪われ、ワンチャンスを決められて失点。そのまま試合は終了し、0-1の痛い敗戦を喫した。

 このコスタリカ戦では、プレミアリーグで普段主審を務める経験豊富なマイケル・オリバー主審が試合をさばいた。家本氏はレフェリー目線からオリバー主審の印象を語っている。

「ある意味、彼らしいさばき方だと思って見ていました。ポジションも素晴らしかった」と全体的なレフェリングを称賛。そのうえで「プレミアだったらもう少し判定を待つのかなというシーンも割と丁寧に吹いていったなという印象でした」と、プレミアとの“スタイル”の違いに言及した。

「イエローカードもかなり出ました(両チーム合わせて6枚)。『え、それも出すの?』というシーンも個人的にはいくつかあり、『それプレミアだったら出してる?』という印象も感じていました。判定自体が悪いとは思っていないです。ただ、彼がプレミアとW杯でパフォーマンスのテイストを変えていて、FIFAとプレミアの考え方の違いが出ているなと感じました。そういう楽しみ方もしながら個人的には見ていましたね」

 一例として、この試合で最初の警告を受けたのは前半41分のコスタリカ代表FWアンソニー・コントレラスだ。日本代表DF吉田麻也の足を踏みつけたことに対するイエローカードだったが、家本氏も「赤まではいかない事象。今大会は選手の安全性を守るというメッセージを感じています。プレーの中で結果的に踏みつけてしまったという判断でイエローカードだったのでしょう」とこの場面ではオリバー主審の判定を支持している。

 元国際審判員として活躍した家本。審判ならではの視点から、W杯の舞台における些細なレフェリーの変化について見解を示していた。

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家本政明

いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。

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