【W杯】半自動オフサイドで判定が早くなったのか? 元主審・家本氏、日本戦の“得点取り消し”に見解「疑問が残る部分はある」
【専門家の目|家本政明】ハフェルツのゴールはVARチェックで認められず
森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング24位)は、11月23日にカタール・ワールドカップ(W杯)グループリーグ第1節でドイツ代表(同11位)と対戦。W杯優勝経験国を相手に堂々と戦い、2-1の逆転劇を演じて大金星を挙げた。元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏が、前半アディショナルタイムにドイツの得点がオフサイドとなったシーンを分析している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)
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日本は前半33分にペナルティーキック(PK)から失点し、0-1のビハインドを背負う。迎えた同アディショナルタイム、ペナルティーエリア内で揺さぶられて最終的にFWカイ・ハフェルツに押し込まれ、ドイツの2点目かと思われた。しかし、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)のチェックでハフェルツがわずかにオフサイドと判定され、日本は1点ビハインドでハーフタイムへの突入になった。
この判定シーンについて家本氏は「代表戦はサポーター目線でしかリアルタイムは見ていませんが…」と前置きしたうえで、「おそらく現場のレフェリーは一度得点を認めている感じでした」とピッチ上の4人の審判団はオフサイドとは判断していなかっただろうと推測。「映像だけ切り抜いてみると、簡単な判定に見えますが、W杯という大舞台での状況や心理もある。VARの判断で正しいところに導かれたと思います」とVARの活用が光った場面だとした。
しかし、同シーンでは判定までに少し時間がかかった経緯がある。この点に関して家本氏は「たしかに多少時間はかかったなという印象です。半自動オフサイドが導入されている割には遅かったかもしれないですね」と率直な意見を述べている。
「該当シーンはオフサイドかどうかの判定で、ほかの複雑な事象は絡んでいなかったと思います。時間がかかった理由は分からないですが、もう少し早く判定できたのではないかなとも思いますね。疑問が残る部分はありますが、結果として正しい判定に導かれたのは良かったと思います」
今大会で導入されている「半自動オフサイド技術」は、従来よりも早い段階で判定が出るとされている。日本対ドイツの該当シーンでは連係やほかの部分で時間がかかっていたのかもしれない。
家本政明
いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。