W杯直前で浮き彫りに 森保ジャパン、カナダ戦の課題と収穫…「選択肢ができた」と評価できる点は?

鎌田のボランチ起用、負傷明け選手のコンディション確認は収穫か

 プレスをかけることは目的ではなく、あくまでボールを奪うという目的のための手段だ。ボールが奪えない時に前からプレスをかけてしまえば、前線の選手たちの疲労蓄積が早まるだけになり、その後の攻守の精度にも影響が出てくる。この日は特に長時間出場した南野がピッチを離れるまでプレッシングをかける姿が印象的だったが、献身的に守備ができる前線の選手が多いのは日本の強みだけに、これを生かせるように回収方法を確認したい。

 攻撃面では、MF鎌田大地(フランクフルト)が投入されるまで、ボールの収まりどころが見つけられなかった。MF相馬勇紀(名古屋グランパス)が決めた先制点の場面のように裏を取れる場面もあったが、W杯の基準では小柄な選手が多いため、ロングボールの競り合いになるとほとんど勝つことはできず、ボールをキープできない。そうなると後ろもラインを上げる時間もできず、押し込まれてしまう。GK権田修一(清水エスパルス)はハイボールの処理の判断を誤ったことを認めた際に「身長は急に高くならないから」と、判断の改善を誓ったが、前線の選手も身長が急に高くなることはない。出し手と受け手の意思統一を図り、チームとしてボールを保持することも必要だろう。

 こうした修正すべき課題がW杯本大会前に出たことも収穫だが、それ以外にも当初のコンディションを上げることや、負傷を抱えてチームに合流した選手たちの現状チェックができたことも大きい。DF板倉滉(ボルシアMG)とMF田中碧(デュッセルドルフ)は、試合の感覚が失われていることを感じさせる場面も散見されただけに、この試合を戦えた意味は大きいはずだ。

 また、負傷者が続出した中盤で、鎌田がボランチでもハイレベルなパフォーマンスで貢献できることが示されたことも大きい。「攻撃でも守備でも彼が今フランクフルトでやっているプレーの良さが出たと思う。代表でも所属チームでやっていることを生かす選択肢ができたという今日の試合だった」と森保監督は言い、「実際にボランチで使うかは分からないが、選択肢ができたのは間違いない。本大会を戦う上で、手応えとしてつかめた」と、今後も状況次第で、ボランチ起用もある可能性を認めている。

 試合終盤には短時間ながら3バックを試し、最後に点が必要な状況では吉田を前線に送り込んでパワープレーをすることも確認できた。初戦のドイツ戦までの5日間で、どれだけチームの力を向上できるかで、難敵ぞろいのグループEでの結果が変わってくる。

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