「W杯は育成の場ではない」 4度のW杯を経験した楢﨑正剛氏が語るW杯は「結果を求めて“日本”という国が戦う場」

楢﨑正剛氏が守護神争いへ持論【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
楢﨑正剛氏が守護神争いへ持論【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

【専門家の目|楢﨑正剛】GK3選手の選考理由と起用法

 カタール・ワールドカップ(W杯)に臨む日本代表メンバー発表を受けて、元日本代表GK楢﨑正剛氏が想像を膨らませた。

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 最初に注目したのは正GKだ。4大会連続での選出となった川島永嗣(ストラスブール)、2014年ブラジル大会以来2回目のメンバー選出となる権田修一(清水エスパルス)、そして9月のエクアドル戦で見事なPKストップを披露したシュミット・ダニエル(シント=トロイデン)。三者三様の争いは混沌を極めているが、楢﨑氏の考えは違った。

「レギュラーに最も近いのは権田選手でしょう。シュミット選手がここへきてアピールに成功しているのは事実ですし、活躍は評価しなければいけません。ただし予選からの流れや継続性、DF陣との連係などを総合的に考えると権田選手が一歩リードしていると感じます。川島選手はピッチに立てば彼らと遜色ないパフォーマンスを発揮できることは強みですが、所属クラブで試合から遠ざかっているという不安材料がある。それぞれの特徴や良さはありますが、今までの森保監督の起用法を見ると信頼を置いているのは権田選手なのかなと」

 全体の枠が23人から26人に増えても、GKの3枠は変わらなかった。そして、谷晃生(湘南ベルマーレ)や大迫敬介(サンフレッチェ広島)といった20代前半の東京五輪世代の選手たちが選考から漏れた事実をどのように受け止めるべきなのか。

 楢﨑氏は理路整然と言い切る。

「W杯は育成の場ではなく、結果を求めて“日本”という国が戦う大会です。第1に3人は誰がピッチに立っても日本に結果をもたらせる選手であるべきで、それにプラスした位置付けとしては、まず基本的に試合に出場する1人目の選手がいて、遜色ない2人目がいる。3人目は試合に絡む確率が低くなったとしてもチームに良い影響を与えられる選手がいい。だから妥当な3選手に収まったと思いますし、組み合わせとしても納得感が強いです」

 フィールドプレーヤーの起用法にも目を向けた。7月に開催されたE-1選手権に出場した選手の中から数少ない“抜擢”となったのが相馬勇紀(名古屋グランパス)だ。ドリブル突破で局面を打開できるアタッカーは、日本の切り札になり得るのか。

「中盤の左サイドは久保建英選手が先発に近い存在だと思いますが、三笘薫選手や相馬選手は途中出場で色を加えられるプレーヤー。相馬選手に限って言えば、チャンスをもらった時にしっかりとアピールできていました。ただ、ガムシャラにプレーするだけでなく、自分の色をチームの結果につなげられていた点が評価ポイントだったのでしょう。三笘選手だけでなく相馬選手というカードを持つことで、得点が欲しい状況での戦い方にバリエーションが増えます」

 W杯本大会でも交代枠5枚を有効活用したチームが勝利に近づくのは間違いない。切り札は多ければ多いほど選択肢が増え、相手にとっては厄介な存在になる。森保一監督が思い描く勝利の方程式が、徐々に浮かび上がってきた。

[プロフィール]
楢﨑正剛/1976年4月15日生まれ、奈良県出身。1995年に奈良育英高校から横浜フリューゲルスに加入。ルーキーながら正GKの座を射止めると、翌年にJリーグベストイレブンに初選出された。98年シーズン限りでの横浜フリューゲルス消滅が決まった後、99年に名古屋グランパスエイトへ移籍。10年には、初のJ1リーグ優勝を経験し、GK初のMVPに輝いた。日本代表としても活躍し、国際大会では2000年のシドニー五輪(OA枠)、02年日韓W杯などに出場。19年1月に現役引退を発表し、現在は名古屋の「クラブスペシャルフェロー」に加え、「アカデミーダイレクター補佐」および「アカデミーGKコーチ」を兼任する。

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藤井雅彦

ふじい・まさひこ/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』(https://www.targma.jp/yokohama-ex/)の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』『サッカー・J2論/松井大輔』『ゴールへの道は自分自身で切り拓くものだ/山瀬功治』(発行はすべてワニブックス)がある。

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