天皇杯初優勝の甲府、大ベテラン山本英臣が激闘の中で見せた“異なる2つの顔”

天皇杯決勝を制し笑顔を見せる山本英臣【写真:徳原隆元】
天皇杯決勝を制し笑顔を見せる山本英臣【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】ドラマティックな展開の中で感じたチームとして戦う姿勢

 サッカーは選手、スタッフ、レフェリー、記者・解説者、フォトグラファーなど、それぞれの立場から見える世界がある。22歳の時からブラジルサッカーを取材し、日本国内、海外で撮影を続ける日本人フォトグラファーの徳原隆元氏が、天皇杯決勝のヴァンフォーレ甲府対サンフレッチェ広島の一戦を現地取材。カメラマンの目に映った独自の光景をお届けする。

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 プロからアマチュアまでさまざまなカテゴリーが参加するカップ戦の醍醐味を表すように、第102回天皇杯決勝はJ1サンフレッチェ広島対J2ヴァンフォーレ甲府の対戦となった甲府は試合を通して劣勢の展開を強いられたものの、格上の広島相手に前半26分、FW三平和司のゴールで先制。後半39分までこの虎の子の1点を守り続けることに成功する。

 しかし、試合最終盤に広島のMF川村拓夢が意地の同点ゴールをゲット。ここまででも十分にドラマティックな展開だったが、90分間の戦いはあくまでも序章に過ぎなかった。

 勝利に手が届きそうだった甲府はそれを逃がすと、延長戦後半にDF山本英臣が痛恨のハンドの反則でPKを献上。だが、落胆した表情を浮かべる山本の心情をGK河田晃兵がPKを阻止するファインセーブで救う。勢い付いた河田は続くPK戦でも広島の4番手のキックをストップ。対して甲府は登場するキッカーが次々と成功させ、締めくくりの5番手山本もネットを揺らし激闘に決着を付けた。

 試合後、サポーター前での記念撮影に向かう、先制点を挙げた三平にカメラを向けると晴ればれとした笑顔をレンズの向こうに作ってくれた。選手たちは次々とサポーターたちが待つゴール前のスタンドへと向かい、感動を分かち合い、歓喜の華が咲いた。

 サッカーにおいて選手の個人能力の差は勝敗を決するための重要な要素である。しかし、個人能力の高さが、そのまま勝利への絶対条件とはならないのがまたサッカーだ。ピッチに立つ11人の総合的能力によって勝敗が決定する兆候が強くなった現代サッカーでは、集団としてどうかがより重要となっている。

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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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