元ブラジル代表が見た鹿島“ナンバー10”荒木遼太郎 「将来有望」と絶賛も、海外移籍を推さない訳とは?

鹿島の背番号10を背負うMF荒木遼太郎【写真:Getty Images】
鹿島の背番号10を背負うMF荒木遼太郎【写真:Getty Images】

【特別分析#3】元ブラジル代表DFジョルジーニョが荒木の実力を評価

 ブラジル代表やドイツのバイエルン・ミュンヘン、レバークーゼンなど、世界のトップレベルでプレーし、さらに、鹿島アントラーズで日本サッカーを知り尽くしたジョルジーニョ氏。現在は監督としてブラジルのビッグクラブから中堅までを指揮し、ブラジル代表アシスタントコーチを務めたこともある。

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 日本では鹿島で2度のJリーグ優勝も果たし、日本サッカー界で実力の高さを示した名手が、日本期待の若きミッドフィールダー、鹿島のMF荒木遼太郎のプレー映像を見て、特徴と期待感を語ってくれた。

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 荒木は2020年に鹿島に入団。昨年は10代選手としては史上2人目となる2桁得点を達成し、クラブ4人目のベストヤングプレーヤー賞を受賞。今季は20歳にして、鹿島の背番号10としてプレーしている。そんな若きホープの印象について、ジョルジーニョ氏はこう語る。

「彼はすごく良い攻撃的MFだね。ラストパスを出せて、かつ、ゴールを決めるためにペナルティーエリアにも入っていける。フィルターの役割も果たせる。ドリブルやフェイントもいい。そういう選手がチームにいるのは、非常に大事なことだ。というのも、典型的な攻撃的MFは多くの場合、ラストパスは出すけど、ペナルティーエリアでのプレーもできるとは限らない。それに、彼は非常によく動ける選手だし、インテリジェンスがある。試合での視野も広く、何が起こっているのかをちゃんと分かっている。鹿島におめでとうを言いたいほどだ」

 昨シーズン終了後、スコットランドのセルティックが獲得を目指しているとも報道されていたが、鹿島に留まった。ただ、いつまた海外からオファーが来てもおかしくないと噂されている。

「ブラジルやアルゼンチンでも、選手たちが非常に早い段階で外国に行くようになっている。日本でも、才能ある選手たちにそういう機会が訪れるのは、自然な流れなんだろう。ただ、僕が思うに、荒木にとっては今、日本サッカーの中で成長することが、非常に重要なことになると思う。日本にいても、多くの良い外国人選手や監督たちもいるなかで、さまざまなことが得られる。チームによって違った試合のシステムがあり、違った守備の仕方に対し、彼が崩すべきラインにもさまざまな形があるから、その経験は大事なものになるからね。

 というのも、どの国に行くにしても、日本のサッカーとは非常に違うから、適応期間が必要になるんだ。例えば23歳で海外に行くならば、彼はプレーの面でも、意識の面でも、もっと成熟した状態で行くはずだから、それが必ずや、適応の手助けになるだろう。さらに、サッカーのスタイルの上でも、やはり意識の面でも、日本人選手としてのアイデンティティーを確立するのは大事なことだよ。今後、日本代表で活躍すべき逸材だということを考えても、鹿島でプレーするのは、彼にとって重要な期間になると思う。将来有望だし、成功を祈っているよ」

 今季途中、腰椎椎間板ヘルニアを発症するアクシデントにより戦線離脱を余儀なくされたものの、9月3日のJ1リーグ第28節浦和レッズ戦で実戦復帰を果たした。ジョルジーニョ氏はそんな荒木に対し、まずは心身両面でより成熟することを望むとともに、近い将来の成功を願っていた。

[プロフィール]
ジョルジーニョ/1964年8月17日生まれ、ブラジル出身。アメリカRJ―フラメンゴ―レバークーゼン(ドイツ)―バイエルン(ドイツ)―鹿島―サンパウロ―ヴァスコ・ダ・ガマ―フルミネンセ。右サイドバック、ボランチとこなし、攻守でチームを支えたユーティリティーで、ブラジル代表としてワールドカップ優勝も経験。鹿島在籍4年間でJ1リーグ通算103試合17得点。リーグ優勝を果たした1996年にはMVPとベストイレブンに輝いた。2022年9月に母国ブラジル2部ヴァスコ・ダ・ガマの監督に就任。

(藤原清美 / Kiyomi Fujiwara)



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藤原清美

ふじわら・きよみ/2001年にリオデジャネイロへ拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特に、サッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のテレビ・執筆などで活躍している。ワールドカップ6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTubeチャンネル『Planeta Kiyomi』も運営中。

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