シャルケ吉田の地位は不変 屈辱6失点でスピード不足に懸念の声も…“欠点カバー”の戦い方に浮かぶ信頼の証
【ドイツ発コラム】シャルケのCBに君臨する吉田麻也のパフォーマンスにフォーカス
ブンデスリーガ第5節シュツットガルト戦を1-1の引き分けで終えたシャルケ。センターバック(CB)の位置で奮闘したDF吉田麻也が試合後静かに語った。
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「向こうも勝ち点がなくて、FWがマーケットの最後で攻撃の核を失ったところで。ちぐはぐさはあったと思います。ミスからの失点は仕方ないとして、ほかの試合を見ても相手も2点以上取られてないし、逆にいっぱい点を取ってるわけではないという試合が続いていたので、拮抗した試合になるなと思ったんですけど。それでも勝ちたかったですね」
前半18分に失点したものの、3分後すぐに同点に追いつき、さらに後半22分にはシュツットガルトDFヨシュア・ヴァグノマンが2枚目のイエローカードで退場処分に。20分以上あった数的有利の時間帯で3度惜しいチャンスを作った。だが最終的には1-1の引き分けどまり。開幕から未勝利が続いている。
地元メディアから問題点の一つに挙げられたのが守備バランスの悪さで、特に第4節ウニオン・ベルリン戦では守備が壊滅的に崩壊し6失点。不用意なボールロストから簡単に裏のスペースを突かれてはスピードとパワーのあるウニオンFW陣に矢継ぎ早に突破を許してしまう。
そんななか、吉田のスピード不足を心配する声が少なからず上がっている。チームとしての守備がバラバラだったウニオン戦では相手FWとの1対1を何度も余儀なくされ、苦戦するシーンも少なくなかった。このシュツットガルト戦でも相手FWサイラス・カトンパ・ムブンパの迫力あるドリブル突破に対して後れを取るという場面もあった。
だが、フランク・クラマー監督をはじめ、首脳陣の吉田に対する信頼は厚い。シンプルなスピード勝負になると苦しいのであれば、そうした状況が起きにくくする戦い方を模索することが求められる。この試合ではボランチに優れた走力とスピードと守備能力を持つMFフロリアン・フリックを起用。守備ライン前のスペースを埋め、カバーを徹底させたことで相手の攻撃をうまく分断することができていた。
周りの選手が守備に汗をかき、相手の攻撃選択肢に制限を加えることで吉田が読みの鋭さと的確なポジショニングでボールをカットするシーンがかなり見られたのではないだろうか。シャルケの同点シーンも起点となったのは吉田のボールカットからだ。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。