韓国×ブラジルで2つのVAR介入→PK判定、元主審・家本氏の見解は? 「現場で見極めるのは難易度が高い」

VARを進言した韓国の審判団は「フェアだった」

 今回、主審は日本人の佐藤氏だったが、VARの進言をしたのは韓国の審判団だった。親善試合ならではのレフェリーの配置だが、家本氏は「同じ国民だったら応援したい心情が働いてもおかしくないけど、心情を横に置いて、判定の正しさに徹したところはフェアだった」と正当なジャッジが下された経緯を称えた。

 2つのシーンとも、現場で肉眼レベルの判断は難しいとのことだったが、これはなぜか。どちらも「レフェリーのポジションが縦位置になってしまって判断が難しいポジションで見ているというのが原因」としながらも、特に1つ目のシーンについては「流れから正しいポジション、正確に見えるポジションを取るのはほぼ不可能だった」という。一方で2つ目のシーンについては、正しい位置にいると、見えた可能性はあったと分析した。

「2つ目のシーンはいいポジションにいれば、最終的な前後関係が、ボール、FW、DFだったので、その方向にDFがいくということはボールに行く前にFWに当たる可能性が高いという準備ができる」

 どちらにせよ、2つのVAR介入による判断は正しいものだった。だが、審判の心情として、1試合に2度のVAR介入は「つらい。だいぶヘコむし気持ちが落ちちゃう」と、佐藤主審を思いやった。

「ただ、落ち込む半面、安心感もある。正しい判定を選手、応援している人たちに提供できている。両方の感情があったと思う」

 難しい環境にもかかわらず、結果的に正しい判断を下し、試合を円滑に進めた佐藤主審、韓国の審判団はこの一戦で影のMVPだったかもしれない。

家本政明

いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。

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