「正直、僕らは決して強くない」 残留決定のボーフム、終盤に浅野拓磨の“使い方”をマスターできた訳「賛辞に値」

浅野は終盤3試合で3ゴールという結果を残した

「とても素敵な気持ちだよ。すごく感動している。ファンが僕らをこんなにもサポートしてくれるなんて信じられないほどのものがある。ファンの力で僕らは今季何度も素晴らしい勝利を挙げることができたんだ」

 そんなボーフムの喜びの輪の中には日本代表FW浅野拓磨の姿もあった。このビーレフェルト戦も含め終盤3試合で3ゴール3アシストの活躍を見せるなど、ボーフムファンの心をガッツリとつかんでいる。チームとの関係性が良好というのもいい。浅野は以前チームの課題として次のように話していたことがある。

「正直、僕らのチームは決して強くはない。個人個人のレベルも、ブンデスの中でいったら高いかといったらそうではない。だから、1人1人がパスを出した後のワンプレー、受けるプレーをもうちょっと意識あげられたら、もっと全員が絡める場面が増えてくるはず」

 以前はチーム全体としてボールを持った時に焦りすぎていたり、あるいは臆病になってしまっていたが、いまはそんなことがない。ピッチ上の選手全員が「いつ、どこで、誰に、どのようなボールを送るべきか」という共通イメージのもとプレーできているのは大きい。

 浅野の使い方にしてもそうだ。どのあたりにどんなボールを送ったら浅野はボールを収めて、チャンスにしてくれるのかというのをわかってもらえている。重心低くぶつかり合いにも強くなっている浅野は守備ライン裏へのロビングボール処理がうまい。第28節ホッフェンハイム戦ではまさにその形から抜け出して2ゴールをマークした。

 シーズン前は降格候補として名前を挙げられていたボーフムが最終節を待たずに残留を決めることができたのは、チームによるそうした日頃からの確かな取り組みがあり、チームに自信と確信を植え付けていったライス監督の素晴らしい手腕があったからこそ。

 昇格2年目となる来季も厳しい戦いが待っている。それでも今季培った経験をベースにボーフムはクラブ一丸となって道を切りひらいていくだろう。苦しい時こそ1人1人の力を合わせて乗り切る。炭鉱町のクラブにはがっちりと結びついた団結力があるのだ。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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