ホーム通算750ゴール達成も敗戦 清水の選手たちが“逆襲”に向けて内に秘める悔しさ

高橋、ベンジャミン・コロリ、白崎は悔しさを胸に反攻へ

 しかし、この直後にC大阪MF奥埜博亮に勝ち越し点を決められると、終了間際にもあっさりと追加点を奪われ、1-3でチームは連敗を喫した。試合後に高橋は言葉少なに記念ゴールの喜びよりも「1失点目は自分のせいで失点してしまった」と悔しさをにじませていた。そして、この試合ではその「悔しさ」の感情を抑えきれなかった選手がほかにもいた。

 コソボ代表MFベンジャミン・コロリは後半29分にDF片山瑛一のクロスから決定機を迎えた。絶妙な胸トラップから放ったシュートは相手GKに阻止され、同点のチャンスを逃した。「これまでなら10回同じチャンスがあれば10回決めていた」とその自らの不甲斐なさに、試合終了後のスタンドへの挨拶時には顔を手で覆い、目頭を押さえてグラウンドを1周した。

 そして、もう1人。この試合でもチーム内で唯一12キロ以上を走り切り、チームの心臓として奮闘したMF白崎凌兵は試合終了後すぐにベンチ裏に戻ってしまい、メンバー入りしたほか17人の選手がスタンドへ挨拶するなか、1人呆然と立ちすくんでいた。

 プロサッカー人生で試合後に挨拶に出なったことは初めてで、「上手く説明はできないが、やるせない気持ちがあった」と白崎もまた同じように自らの、そしてチームの不甲斐なさを悔やみ、サポーターに会わせる顔がないと挨拶に出ていくことができなかった。ただ、冷静さを取り戻したあとは自身のSNSで謝罪し、「ああいう行動を取るべきではなかったという反省の方が大きい」と話した。

 助っ人として昨シーズン途中に加入したが公式戦9試合無得点に終わり、今シーズンに懸ける思いが強く、外国籍選手7人のうち、唯一開幕からメンバー入りを続けているベンジャミン・コロリ。強い気持ちを持って古巣へ復帰した高橋と白崎。試合に負けて得られるものは少ないかもしれないが、それでもその反省点を次につなげることはできるはずだ。

 そのほかにも、内に秘めた悔しさを次節のゲームで晴らそうと考えている選手は多い。「私の指示だけをやるのでは選手たちはつまらないと思う」と選手たちの自主性にも期待している平岡宏章監督が次にどんな作戦を立てて、それを選手たちがどう表現してくれるか。ホーム通算800ゴールに向けて次節のIAIスタジアム日本平で清水のゴールラッシュが見られるかもしれない。

(Sの極み・下舘浩久 / Hirohisa Shimodate)



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下舘浩久

しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。

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