以前の浦和に似ているFC東京、人事を急ぐより明確なロードマップ作成を優先する時だ

徳島ヴォルティスに2失点で敗れたFC東京【写真:Getty Images】
徳島ヴォルティスに2失点で敗れたFC東京【写真:Getty Images】

【識者コラム】長谷川監督が辞任、森下監督が引き継いだ徳島戦で見えた戸惑い

 FC東京で、また1つの時代が終わった。

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 横浜F・マリノスに0-8で大敗を喫した後に長谷川健太監督が辞任。森下申一監督が引き継いだ徳島ヴォルティス戦も、ホームで主導権を渡して0-2で完敗した。PKで追い付くチャンスはあったし、ポゼッションやパスの本数が主導権の証とは言い切れないが、チーム内には明らかに戸惑いが見えた。象徴していたのは、安部柊斗のコメントである。

「もっと1人1人がしっかりとポジションを取りボールを大切にして、その中で縦パスを入れるなどの工夫をしていかないと相手も怖くない。いい時は、空いているスペースを共有してそこに外国人選手が入って来ていたが、今日は適当に蹴って彼ら任せになっていた」

 もちろん横浜FM戦の大敗から2週間で、森下監督にできることは限られていた。だがGKからロングフィードに頼らずに組み立て、中盤でショートパスを何本もつなげるなど、丁寧なビルドアップへの転換を図ろうとしているように見えた。しかしその結果、徳島のミドルゾーンでの囲い込みに合ってショートカウンターを食うなど、当然ながら継続的に戦い方を突き詰めてきたチームとの差は明白だった。

 そして徳島側の分析からも勝算は導けていたようだ。復帰出場した岩尾憲が語った。

「FC東京はタレントが豊富な相手で、誰が出てくるかで対応が異なるが、スタメンはディエゴ・オリヴェイラとレアンドロ。カウンターとゴール前で怖さはあるが、守備はそれほど滑らかにできるわけではない。こちらがギャンブルに走らなければコントロールできるはずだと思った」

 確かにFC東京は首都のクラブとして、常に知名度の高いタレントを揃え、日本代表にも多くの選手を提供してきた。だが反面、そのタレントを十分に活用し切れず、クラブも最適解を求めて分かりやすく揺れ動いてきた。

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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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