J1残留争い“直接対決”で「非常に大きな勝利」 清水、上位と当たる勝負のラスト9戦へ

9戦ぶりの勝利もロティーナ監督は「ポゼッションとこぼれ球のケア」に課題と指摘

 清水は9試合ぶりの勝利、約2カ月半ぶりに勝ち点3を掴んだ。この第29節では11位の北海道コンサドーレ札幌以下の順位で勝ち点3を積み上げられたのは清水だけ。順位も湘南ベルマーレを抜き15位として、降格圏の17位徳島とは勝ち点差を「6」とした。

 試合後にロティーナ監督は「チームには自信が必要だった。非常に大きな勝利となった」と振り返った。しかし、試合内容については「ポゼッションとこぼれ球のケア」に課題があると、まだまだロティーナ監督が目指すサッカーにはほど遠い内容ということだとは思うが、後半42分に見せたディサロ燦シルヴァーノの本来の動きと言える裏への抜け出しからダイレクトでパスを繋いでゴールに迫る攻撃や、ボールを奪われてからの切り替え、カウンター攻撃の守備への戻りなど、チームとしての成長も見ることができた試合でもあった。

 絶対に勝たなければいけない戦いに勝利した清水だが、それでもまだ「残留」が決定したわけではない。勝ち点差6は連勝、連敗で追いつかれてしまう。今シーズンは2連敗が2度あるだけで大きな連敗はないが、逆にまだ連勝も達成していない。過去には年間勝利数7勝で14位だった2004年。そして降格した2015年も5勝しか挙げられず一度も連続しての勝利を見ることができなかった。3度目となる不名誉なシーズンを回避して、残り9試合で連勝ができれば残留の可能性は高まるはずだ。まずはそのチャンスが次節に訪れる。しかもホームゲームで、清水サポーターにとっては無敵の「鹿児島デー」であることを後押しに取り戻した自信を見せてほしい。

 また、この試合では「10.17」という2015年10月17日にクラブ史上初のJ2降格が決定した日付のメッセージが戒めのためにスタンドに掲げられたが、その当時のつらさや虚しさを知る選手はこの日の18人のメンバーではMF竹内涼のみ。今、在籍している多くの選手たちには関係のないことかもしれないが、サポーターはいまだにあの日のことを忘れてはいない。指揮官も「これからも難しいギリギリの勝負が待っている」と油断はないが、今シーズンの残り9試合でも90分間、気を緩めることなくサポーターに気持ちが伝わるプレーで戦ってくれることを期待している。

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下舘浩久

しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。

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