長谷部&鎌田のフランクフルト、快進撃の理由 選手が“弱さ”を告白できる監督の存在

フランクフルトのアディ・ヒュッター監督【写真:Getty Images】
フランクフルトのアディ・ヒュッター監督【写真:Getty Images】

ヒュッター監督も現状に手応え「喜びと集中がいい感じで混ざり合っている」

 プロ選手でも不安に押し潰されそうになることはある。自分で克服できるならいいが、自分ではどうしようもない時だってある。そうした時に自分の弱さを打ち明けることができる指揮官がいるというのは、選手にとってとても心強いことだろう。

 不調から蘇ったのはヒンターエッガーだけではない。今ボランチで長谷部のパートナーとしてピッチを縦横無尽に走り回り、躍動したプレーを見せるスイス代表MFジブリル・ソウもそうだ。

 昨シーズン、期待通りの活躍ができていないとファンや専門家から批判されることがあっても、ヒュッター監督はかばい続けていた。時間を与えたら必ず活躍してくれると言い続けた。そうなるように選手に向き合い、取り組むテーマを明確にして導いてきた。そしてその言葉に嘘はなかったことを、選手がピッチで答えていく。なんと素晴らしい関係性か。

 20節終了時点で勝ち点36の4位につけ、チーム総得点41はリーグ2位(1位はバイエルンの58)。そんなチームの雰囲気について、ヒュッター監督は14日のケルン戦に向けた記者会見で次のように語っている。

「毎週のようにいい内容で勝てる状況にいることでチームの雰囲気はいい。たくさんの笑顔が見られるのはいいことだ。そして喜びと集中がいい感じで混ざり合っている。チームは試合に向けて100%集中しているし、トレーニングもとてもいい。チームを覆っているこの高揚感にブレーキをかけるつもりはない。それぞれの選手が力を抜くことなくトレーニングから取り組むかを見定めるのが私の仕事だ」

 監督と選手の思いが合致しているチームは強い。リーグ一本に集中して取り組めるメリットを最大限に生かし来季UEFAヨーロッパリーグ、それどころかUEFAチャンピオンズリーグ出場権獲得に向けて、残りの試合に全力で挑戦し続ける。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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