日本に衝撃を与えた王国ブラジルの技術 苦しい“訓練”を凌駕した“遊び”で磨いたプレー

子供たちの興味を、途中でへし折ってしまう指導者が多過ぎる

 もちろん、2人の日系人選手が才能に恵まれていたことは間違いない。しかし日本人でも同じ環境を与えれば、おそらく近いレベルに到達できた選手たちも何人かはいたはずだ。来日早々の吉村氏はリフティングもできない日本人選手たちを見て驚いたわけだが、裏返せば20歳を過ぎてからリフティングを覚えた日本人選手たちが、五輪でメダリストになれているのだ。

 日系人選手の2人は、子供の頃から実戦だけを繰り返し、それが楽しくて仕方がなかった。ところが同じ頃、多くの日本人選手たちは、苦しい「訓練」に耐えてきたのに相応の効果は得られなかった。そして残念ながら、この傾向は令和の今も大幅には改善されていない。

 少年サッカーは普及し、今では大半が小学校低学年までには、ほとんどボールを落とさない程度まで習熟している。しかしせっかく質が高まり、これからどんどん楽しくなるはずの子供たちの興味を、途中でへし折ってしまう指導者が多過ぎる。それを「選手たちのことを思って」と語る監督、コーチもいるが、結局は勝ってチーム(クラブや学校)の評判を広めたい大人の都合だ。

 バルセロナのカンテラで監督を務めていたジョアン・サルバンスは、「もはや欧州の主要クラブではボールを使ったトレーニングしかしていない」と語っていた。現在C大阪を率いるロティーナ監督も、「ただ走るだけのトレーニングは30年も前に終わっている」と、あるインタビューに答えていた。

 日本ほどジュニアから高校年代まで全国大会が溢れる国はない。不要、不急のタイトルに追われれば、どうしても指導者は短絡に走る。

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(加部 究 / Kiwamu Kabe)



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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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