歴代日本代表CBで“異質だった才能” 宮本恒靖が放った明晰な頭脳と統率力

CBのタイプとチーム戦術の相性

 2006年、宮本はキャプテンで不動のCBになっていた。ジーコ監督はトルシエ前監督の守備戦術をリセットしている。緻密なラインコントロールは破棄され、それに伴ってハイプレスもなくなった。守備戦術としてはジーコのほうがオーソドックスだったが、それが問題を引き起こしたと言っていいだろう。

 プレッシングを最初に日本代表に導入したのは、加茂周監督だった。少し間を置いて、トルシエ監督が復活させている。ただ、トルシエが導入したのも主にDFのラインコントロールで、中盤のライン形成はしていない。どちらもなるべく早く相手をマークしてプレッシャーをかけ、ラインアップするという守備だった。

 ジーコ監督がラインコントロールを破棄してみたら、忘れていた中盤のライン形成のなさが浮き彫りになった。陣形は間延びし、スペースを埋めきれなくなって、06年W杯初戦のオーストラリア戦で1-3と逆転負け。次のクロアチア戦(0-0)でプレスの開始地点を明示すると、中盤のライン形成はできていたので、やろうと思えばできたはずなのに、ジーコがそれに手を付けたのはW杯本番ですでに手遅れだった。

 守備面でジーコ監督時代と似ていたのが、アルベルト・ザッケローニ監督の時だ。どちらも丁寧にパスをつないで押し込み、押し込むことで高い位置で守備ができる。要は攻撃力で守備負担を軽減する、攻撃は最大の防御という考え方である。守備はカウンターへの対処が多いので、DFは高さよりスピードがポイント。宮本や今野のタイプが生きる戦術だったわけだ。

 2018年ロシア大会の日本は、中盤でのミドルプレスをメインにしていた。ミドルプレスは現在の日本にとって生命線と言える。

 引き込みすぎると高さとパワーでやられる。かといって押し込みすぎると、スピードで持っていかれる。ラインは上げすぎず下げすぎず。かつてその整備の後れがネックだったFWとMF6人の連動とライン形成は、今やそれが命綱だ。ここを無視して攻撃力だけで6人を構成してしまうと、まず戦えない。

 チームの守備戦術はCBのキャラクターがかなり関係する。2010年W杯では、中澤と闘莉王のコンビが活躍した。ただ、それ以前はポゼッション&ハイプレスの戦法だったので、カウンターを受けるとスピード不足を露呈していた。CBの特徴を無視して戦術を決められるのは、CBに弱点がない場合だけだ。

 実際、W杯で頂点を目指すなら、CBには完璧さが求められる。そうでないと戦術的に偏らざるをえず、偏った戦い方はよほど抜きん出た力がないと不利になる。宮本の頭脳と技術、今野のスピード、中澤や闘莉王の高さとパワー。今やそれらを兼ね備えたCBが求められている。しかも、1人ではなく2人(または3人)のセットになっていることが条件と言っていい。パーフェクトなCBが揃った時、日本はミドルプレスでないと戦えない状態から抜け出すことができる。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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