スポーツ界にも影響を及ぼす新型コロナ Jリーグも中断…豪記者が見る今後の課題とは?

マスクを着用する観客、ボールボーイの様子【写真:小林 靖】
マスクを着用する観客、ボールボーイの様子【写真:小林 靖】

【識者コラム】試合延期の判断は理解できるものの、今後はリーグ再開の時期が問題に

 2週間前、横浜F・マリノスは全北現代とAFCチャンピオンズリーグ(ACL)初戦をアウェーで戦った時、コーチングスタッフを含めたチーム全員は医師による体温検査なしにホテルを出ることができなかった。一人ひとり、ホテルで体温を測ってからスタジアムに向かうチームバスに乗車している。

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 Kリーグがリーグ開幕の延期を決定する前から、韓国側が新型コロナウイルスの脅威とスポーツに与え得る影響に大きな懸念を持っていたことがうかがえるエピソードだ。中国から発生した健康面での不安は、今やアジア全体の生活に影響を及ぼし、そのなかには当たり前のようにサッカーも含まれている。

 だが、本当にそうあるべきなのか?

 最初にリーグの延期を決定したのは中国で、韓国と日本もそれに続いた。クウェートとサウジアラビアでも試合開催がキャンセルされ、オーストラリアのパース・グローリーが韓国遠征を拒否して罰金を受けそうにもなっていたが、AFC(アジアサッカー連盟)は最終的にパースのリクエストを認めている。

 イラク、サウジアラビア、そしてカタールはリーグ戦の中止を検討中で、今季のACLとAFCカップが開催されるのかは疑問視されている。イランにおいてはサッカーとフットサルの試合が無観客で行われ、フットサル女子代表選手のエルハム・シェイクが新型コロナウイルスの影響で死亡している。

 イランの試合開催を続ける決断は、クラブや選手、審判員たちから広く非難されている。イランは中国以外で最も多くの死者を出している国であり、彼らは重大な危険と健康面の不安に晒されていると感じている。イラン最大のクラブの一つであるエステグラルのコーチは、クラブや選手、審判員は“抗ウイルス”ではなく、チームの中にもすでに感染者がいる可能性を感じているとコメントしているという。

 これらを踏まえれば、日本でも試合開催を見送るという決断は理解できる。ただ、Jリーグは“いつ”リーグを再開するのかという問題にも直面することになる。

 今回のアナウンスがなされた時、日本では3人の高齢者の死亡が確認されていた。日本全国での感染者の数は数百人といったところであり、さらなる感染を防ぐのが重要なことだ。ただ、サッカーや学校を閉鎖することによって目的が達成できるとは考えにくい。

 事実として、新宿駅では毎日、Jリーグにおける1年の総観客数の半分以上の人々が行き交っている。公共交通機関、ショッピングセンター、オフィス、レストラン、ホテル……。その他多くの施設が普段どおりに営業を続けているのなら、サッカーのスタジアムから人々を締め出したところで、どんな影響があると言うのだろうか。これはもっともな疑問だ。

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スコット・マッキンタイヤー

東京在住のオーストラリア人ジャーナリスト。15年以上にわたってアジアサッカー界に身を置き、ワールドカップ4大会、アジアカップ5大会を取材。50カ国以上での取材経験を持ち、サッカー界の様々な事象に鋭く切り込む。

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