“サッカー王国”はなぜ低迷したのか 24年ぶり優勝の静岡学園、「個性」への原点回帰

優勝旗を持つ静岡学園キャプテンの阿部健人【写真:Noriko NAGANO】
優勝旗を持つ静岡学園キャプテンの阿部健人【写真:Noriko NAGANO】

主将の阿部も自賛 「磨いてきたドリブルとショートパスをブレずに使った」

 静岡学園の川口修監督は、その理由について「以前の静岡は個性的な選手が多かった。近年は勝つサッカーが主流になり、個性が少なくなってきている気がする」と解説したうえで、同校サッカー部を創設した初代監督の井田勝通さんを引き合いに出し、「静学は井田先生の頃から個を育成するなかで結果を出す指導をしてきました。勝利が先行し、個(の育成)が疎かになったのかなと思います」と、静岡サッカーの低迷の一因を取り上げた。

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 今大会を通し、静岡学園はドリブルという個人技、個の特長を前面に出して頂点を極めた。

 決勝で圧巻の同点ゴールを蹴り込んだ2年生FWの加納大は、「日本のサッカー界に影響を与える優勝だったし、自分たちの戦い方だったと思う」とスタイルに固執した自負心をのぞかせた。主将のDF阿部健人も「磨いてきたドリブルとショートパスをブレずに使った。静岡の歴史を変えられて嬉しい」と自賛した。

 前日には第28回全日本高校女子選手権で、静岡の藤枝順心が神村学園(鹿児島)を1-0で下し、2大会ぶり4回目の優勝を飾っていた。“サッカー王国”の復興を目指してきたという2得点のDF中谷颯辰は、「アベック優勝ですから、これで静岡は盛り上がりますね。自分たちが王国復活への一歩を踏み込む力になれた」と晴れがましい表情だった。

(河野 正 / Tadashi Kawano)



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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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